技能実習ビザ

技能実習ビザとは、在留資格「技能実習」のことで就労ビザの種類 の中の一つです。技能実習ビザに関する事柄を以下にまとめました。技能実習ビザ理解のお役に立てれば幸いです。

技能実習制度の趣旨

技能実習制度は、日本で開発され培われた技能、技術又は知識を開発途上地域等へ移転を図り、その開発途上地域等の経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的とする制度です。基本理念として「技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」と明記されています。

技能実習のニュースはかなり前からテレビ、新聞、ネット上でよく取り上げられています。失踪、不当解雇、強制送還(退去強制)、犯罪など、大半が悪い、マイナスな内容ですが、平成28年の技能実習制度の見直し がありました。新たに技能実習法とその関連法令が制定され、入管法令で規定されていた多くの部分が、この技能実習法令で規定されることになりました。

制度の見直しがあったからと言って、すぐに「失踪、不当解雇、強制送還(退去強制)、犯罪」などの事件がなくなるというものではないですが、法令遵守で進めていければ技能実習制度は良い制度です。雇用先の社長様や日本人の先輩にかわいがられて休みの日に一緒に遊びに行ったりする実習生の方もいます。私も関わった範囲になりますが、技能実習生の方々が法令遵守で雇用され、また制度も理解してもらえるように努めています。

なお、技能実習生は労働者として、日本人労働者と同様に労働関係法令の適用を受け、保護されています。

外国人技能実習機構の設立

技能実習法に基づき外国人技能実習機構が設立されました。主な業務は、技能実習計画の認定、実習実施者(技能実習生の受入企業)の届出の受理、監理団体の許可申請の受理、実習実施者や監理団体に対する指導監督(実地検査・報告徴収)や、技能実習生からの申告・相談に応じるなど、技能実習制度の適正な実施及び技能実習生の保護になります。

東京に本部事務所を置くほか、全国で13か所(札幌、仙台、水戸、東京、長野、富山、名古屋、大阪、広島、高松、松山、福岡、熊本)の地方事務所・支所において業務を行っています。

技能実習計画の認定制

技能実習を行わせようとする者(実習実施者)は、技能実習生ごとに技能実習計画を作成し、その技能実習計画が適当である旨の認定を受けることとされています。技能実習計画に記載しなければならない事項や申請の際の添付書類が、技能実習法及びその関連法令で規定されています。

技能実習計画の主な認定基準は以下のようなことです。
同一の作業の反復のみによって修得できるものではないこと。
・ 第2号・第3号については移行対象職種・作業 に係るものであること。
・ 技能実習生は本邦において従事しようとする業務と同種の業務に外国において従事した経験等を有し、又は技能実習を必要とする特別の事情があること
(団体監理型のみ)。
技能実習生や家族等が、保証金の徴収や違約金の定めをされていないこと
(技能実習生自身が作成する書面によって明らかにさせる)。
・ 第1号の技能実習生に対しては、日本語・出入国や労働関係法令等の科目による入国後講習が行われること、など。

ただし、認定を受けた場合であっても、その後、認定の基準を満たさなくなった場合や、認定計画のとおりに技能実習が行われていない場合等には、実習認定の取消しが行われることになりますので、常に法令等の基準を満たして技能実習を適正に行わせる必要があります

技能実習実習実施者の届出制

技能実習法により、実習実施者が技能実習を開始したときには、遅滞なく届け出なければならないこととされました。この届出は、機構の地方事務所・支所の認定課に行います。

技能実習監理団体の許可制

監理事業を行おうとする者は、主務大臣の許可を受けなければならないこととされており、当該許可基準に適合しなければ許可を受けることはできません。

監理団体の主な許可基準は以下のようなことです。
・営利を目的としない法人であること
・実習実施者に対する定期監査(頻度は3か月に1回以上、監査は以下の方法によることが必要)
・第1号の技能実習生に対する入国後講習の実施(適切な者に対しては委託可能であることを明確化)
・技能実習計画の作成指導
技能実習生からの相談対応(技能実習生からの相談に適切に応じ、助言・指導その他の必要な措置を実施) ・外部役員又は外部監査の措置を実施していること
基準を満たす外国の送出機関と技能実習生の取次ぎに係る契約を締結していること、など。

ただし、許可を受けた場合であっても、その後、許可の基準を満たさなくなった場合には、監理事業の全部又は一部の停止や、監理事業の許可の取消しが行われることになりますので、常に法令等の基準を満たして監理事業を適正に行う必要があります。

なお、監理団体の許可には、一般監理事業の許可と特定監理事業の許可の2区分があります。

一般監理事業の許可を受ければ第1号から第3号までの全ての段階の技能実習に係る監理事業を行うことができます。
特定監理事業の許可を受ければ第1号技能実習及び第2号技能実習に係る監理事業を行うことができます。

この許可申請は、機構の本部事務所の審査課に行います。最終的な許否の判断は主務大臣が行います。

技能実習生の保護

技能実習生の保護のため、技能実習の強制、違約金設定、旅券又は在留カードの保管等に対する禁止規定を法律に定めるほか、これに違反した場合の罰則に関する規定を定めています。

また、実習実施者又は監理団体の法令違反があった場合に、技能実習生が当該事実を出入国在留管理庁長官及び厚生労働大臣に通報・申告することができることとし、技能実習生からの相談に応じる体制を整備しています。

さらに、人権侵害行為を受けた技能実習生が引き続き技能実習を継続することができるよう、機構において転籍を支援する体制も整備することとしています。私もこの「人権侵害・転籍」のケースの書類作成をした経験がありますが、外国人技能実習機構は素早く対応してくださいました。認定は2日くらいのスピードで出ました。

技能実習二国間取決め

  • ①外国で関わる機関
    ・外国の送出機関とは、技能実習生が国籍又は住所を有する国又は地域の所属機関や団体監理型技能実習生になろうとする者からの団体監理型技能実習に係る求職の申込みを日本の監理団体に取り次ぐ機関をいいます。

    ・外国の準備機関とは、技能実習生になろうとする者の外国における準備に関与する外国の機関をいいます。例えば、外国で技能実習生になろうとする者が所属していた会社や、技能実習生になろうとする者を広く対象とするような日本語学校を経営する法人、旅券や査証の取得代行手続を行う者などが含まれます。

  • ②外国の送出機関の主な要件
    ・所在する国の公的機関から技能実習の申込みを適切に日本の監理団体に取り次ぐことができるものとして推薦を受けていること

    ・技能実習生等から徴収する手数料その他の費用について、算出基準を明確に定めて公表するとともに、当該費用について技能実習生等に対して明示し、十分に理解をさせること

    ・当該機関又はその役員が、日本又は所在する国の法令に違反して、禁錮以上の刑又はこれに相当する外国の法令による刑に処せられ、刑の執行の終了等から5年を経過しない者でないこと

    保証金の徴収その他名目のいかんを問わず、技能実習生の日本への送出しに関連して、技能実習生又はその家族等の金銭又はその他の財産を管理しないこと

    ・技能実習に係る契約不履行について、違約金を定める契約や不当に金銭その他の財産の移転をする契約を締結しないこと

    ・技能実習生又はその家族等に対して上記のような保証金徴収や違約金契約締結などの行為が行われていないことを技能実習生から確認すること

    ・過去5年以内に偽造・変造された文書の使用などの行為を行っていないこと

  • ③二国間取決めに基づく送出国による送出機関の認定
    平成28年の技能実習制度の見直し以降の新制度で、我が国政府と送出国政府との間で二国間取決めを順次作成することとなりました。

    各送出国政府において自国の送出機関の適格性を個別に審査し、適正なもののみを認定する仕組みを構築することとしています。認定された送出機関名については、法務省、厚生労働省、外国人技能実習機構の各ホームページに国ごとに掲載されています。

    当該送出国との間で二国間取決めが作成され、当該取決めに基づく制度に移行するまでの間は、送出国政府の公的機関からの推薦状が必要とされるなど要件を満たしていることが必要となります。

    二国間取決め作成状況:計14か国(R1.6月時点)
    ベトナム(H29.6月)カンボジア(H29.7月)インド(H29.10月)
    フィリピン(H29.11月)ラオス(H29.12月)モンゴル(H29.12月)
    バングラデシュ(H30.1月)スリランカ(H30.2月)ミャンマー(H30.4月)
    ブータン(H30.10月)ウズベキスタン(H31.1月)パキスタン(H31.2月)
    タイ(H31.3月)インドネシア(R1.6月)

出典:
外国人技能実習制度について(法務省 出入国在留管理庁 厚生労働省 人材開発統括官)
技能実習制度 運用要領~ 関係者の皆さまへ ~(令和3年4月出入国在留管理庁・厚生労働省編)