技能実習制度に代わる新たな制度と特定技能制度の最終報告たたき台(※10月18日版)

10月18日に、12回目の「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」が行われました。技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関して、最終報告書たたき台が出入国在留管理庁のホームページに公開されました。その内容を資料1-1「最終報告書たたき台(概要)」から見てみました。

※尚、改正法律案は出入国在留管理庁HPの以下(2024年3月15日付)をご覧ください。
出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律案

最終報告書たたき台(概要)

最終報告書たたき台の概要については以下の通り9項目です。

1 新制度及び特定技能制度の位置付けと関係性等
2 新制度の受入れ対象分野や人材育成機能の在り方
3 受入れ見込数の設定等の在り方
4 新制度での転籍の在り方
5 監理・支援・保護の在り方
6 特定技能制度の適正化方策
7 国・自治体の役割
8 送出機関及び送出しの在り方
9 日本語能力の向上方策

最終報告書たたき台(概要)の内容

上記の最終報告書たたき台(概要)にある主な内容は以下のようになっています。

1 新制度及び特定技能制度の位置付けと関係性等
• 現行の技能実習制度を発展的に解消し、人材確保と人材育成を目的とする新たな制度を創設。
• 基本的に3年の育成期間で、特定技能1号の水準の人材に育成。
• 特定技能制度は、適正化を図った上で現行制度を存続。

2 新制度の受入れ対象分野や人材育成機能の在り方
• 受入れ対象分野は、特定技能制度における「特定産業分野」の設定分野に限定。
• 従事できる業務の範囲は、特定技能の業務区分と同一とし、「主たる技能」を定めて育成・評価(技能検定、特定技能評価試験等)。
• 試験不合格となった者には再受験のための最長1年の在留継続を認める。

3 受入れ見込数の設定等の在り方
• 特定技能制度の考え方と同様、新制度でも受入れ分野ごとに受入れ見込数を設定(受入れの上限数として運用)。
• 受入れ見込数や対象分野は経済情勢等の変化に応じて柔軟に変更、有識者等で構成する会議体の意見を踏まえ政府が判断。

4 新制度での転籍の在り方
• 「やむを得ない場合」の転籍の範囲を拡大・明確化し、手続を柔軟化。
• これに加え、以下を条件に本人の意向による転籍も認める。
➢ 人材育成等の観点から、一定要件(同一企業での就労が1年超/技能検定基礎級合格、日本語能力A1相当以上のレベル(日本語能力試験N5合格など))を設け、同一分野内に限る。
➢ 転籍前企業の初期費用負担につき、不平等が生じないための措置を講じる。
• 監理団体・ハローワーク・技能実習機構等による転籍支援を実施。
• 育成終了前に帰国した者につき、新制度による再度の入国を認める。
➢ それまでの新制度による滞在が2年までの者に限る。
➢ 前回育成時と異なる分野を選択可能。

出典:出入国在留管理庁HP「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議(第12回)」参考資料 現行制度と新制度のイメージ図

5 監理・支援・保護の在り方
• 技能実習機構の監督指導・支援保護機能を強化し、特定技能外国人への相談援助業務を追加。
• 監理団体の許可要件厳格化
➢ 監理団体と受入れ企業の役職員の兼職に係る制限又は外部監視の強化、受入れ企業数等に応じた職員の配置、相談対応体制の強化等。
• 受入れ企業につき、育成・支援体制等に係る要件を整備。

6 特定技能制度の適正化方策
• 新制度から特定技能1号への移行は、以下を条件。
①技能検定3級等又は特定技能1号評価試験合格
②日本語能力A2相当以上のレベル(日本語能力試験N4合格など)
※当分の間は相当講習受講も可
• 登録支援機関の登録要件や支援業務委託の要件を厳格化。

7 国・自治体の役割
• 入管、機構、労基署等が連携し、不適正な受入れ・雇用を排除。
• 送出国と連携し、不適正な送出機関を排除。
• 業所管省庁と業界団体の連携による受入れ環境整備のための取組。
• 日本語教育機関を適正化し、日本語学習の質を向上。
• 自治体において、生活相談等を受ける相談窓口の整備を推進。

8 送出機関及び送出しの在り方
• 二国間取決め(MOC)により送出機関の取締りを強化。
• 手数料等の透明性を高め、送出国間の競争を促進。
• 受入れ企業が一定の来日前手数料を負担するなどの仕組みを導入。

9 日本語能力の向上方策
• 継続的な学習による段階的な日本語能力向上。
※就労開始前にA1相当以上のレベル(N5合格など)又は相当講習受講
特定技能1号移行時にA2相当以上のレベル(N4合格など) ※当分の間は相当講習受講も可
特定技能2号移行時にB1相当以上のレベル(N3合格など)
• 日本語教育機関認定法の仕組みを活用し、教育の質の向上を図る。

以上の出典:出入国在留管理庁HP「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議(第12回)」最終報告書(たたき台)の資料1-1

最終報告書たたき台(概要)の内容について

最終報告書たたき台(概要)の内容について。
改善箇所等はほぼ思っていた内容でした。以下は特に感じた事です。

◆4の「転籍」
「やむを得ない場合」の転籍の範囲を拡大・明確化し、手続を柔軟化というのは大変良いと思います。実習生を雇用する会社側も「人権侵害」についてよく分かっていない場合がけっこうあります。「明確化」して周知されなければなりません。

条件付きで「本人の意向による転籍も認める」という事は「人権侵害」等の技能実習生を守る面では良かったとは思います。ただ、「転籍前企業の初期費用負担につき、不平等が生じないための措置を講じる。」ということは必ずしなければならないことです。

また、「技能実習生は都会に行きたがる人が多い」ということも心配です。せっかく地方で外国人を受入れても「転籍」が可能になると、都会の会社に転職されてしまうことが今より更に多くなると思うのです。

この問題にどのように対処するのでしょうか?雇う会社も外国人から見て「働きたい会社」「選ばれる会社」にならなければなりません。

◆5の「 監理・支援・保護の在り方」
技能実習機構の業務に、「特定技能外国人への相談援助業務を追加」されるのは、本当に嬉しいです。今の技能実習機構は相談事の中に「特定技能」が出てくると、相談にのってくれなくなることが多かったです。

違う在留資格なので仕方ないのかもしれないと思いつつ、改善されないかなと思っていました。

◆6の「 特定技能制度の適正化方策」
現状では、「技能実習2号を良好に修了した技能実習生は、特定技能1号への移行にあたって、技能試験や日本語能力試験が免除されます」とあります。

ですので、「新制度から特定技能1号への移行」は、今の技能実習から特定技能への移行より条件が厳しくなる印象です。

◆日本語能力の向上、外国人との共生社会
各会社様が外国人社員の受入れ環境整備や日本語教育に積極的になって下さることは必要不可欠です。

私が出会った会社様は、ほとんど全て外国人社員に良くしてくださっています。母国を離れて働きに来ている、慣れない環境であるという外国人に寄り添っておられます。

今後は、 自治体においても、外国人の生活相談等を受ける相談窓口を増やして頂きたいです。私も微力ながら何かお役に立てるよう頑張っていきたいです。

2023年10月21日