新年明けましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
年末に、兵庫県の有馬温泉にある陶湶御所坊の人事・総務ご担当和田様とお話する機会を頂きました。
有馬温泉は「日本三古泉」で、太閤豊臣秀吉にも愛された、全国的にも大変有名な温泉です。
その有馬温泉の中でも最も古い歴史を持つ旅館が、陶湶御所坊様です。
陶湶御所坊様外観(お写真のご提供:陶湶御所坊様)
陶湶御所坊様公式ホームページ➡こちら
今回のブログでは、和田様に伺った外国人雇用についてご紹介します。
また、陶湶御所坊様での外国人雇用が上手くいっている理由と、外国人採用時の注意点についても、少しお話ししたいと思います。
外国人雇用について:和田様へのインタビュー一問一答
①現在雇用されている外国人の方の人数、国籍、ビザ(在留資格)の種類を教えてください。
外国人社員は6人です。
国籍は、中国、ベトナム、ネパールです。グループ企業で雇用している方は、インドネシアです。
ビザの種類は、6人全員が「技術・人文知識・国際業務」ビザです。
グループ企業の方は「特定技能」ビザです。
②受入開始をしたのはいつ頃でしたか?
2012年頃だったと思います。
③雇用されている外国人の方々の業務内容について教えてください。
フロント業務、通訳業務、予約業務等が中心です。
一番キャリアの長い中国の方には、社長の中国出張にお供をして通訳の仕事もして頂いています。また、中国に行って顧客の新規開拓もして頂いています。
④雇用した方々とお知り合いになったルートについて教えてください。
ホームページを見ての応募か、或いは、ホテル系の専門学校から紹介して頂いたというかんじです。
⑤外国人の方を採用する前の不安や疑問はありましたか?
外国人採用以前にインターンの受入れで外国人の方が仕事していましたので、特に困ったことや不安はなかったと思います。
弊社は外国人社員と日本人社員の区別もありませんし、私自身が国籍関係なく、人柄ややる気を重視しています。頑張っている方を応援したいと思っています。
⑥雇用した外国人の方を選んだ理由はどんなことでしたか?
先ほどの質問にもありましたが、国籍は関係なく、個人的なお人柄や、やる気のある方に来て頂きたいと思って選考しています。
それと、日本語能力も見ています。弊社の外国人社員の日本語レベルはN1(注1)かN2です。グループ企業の社員はN3ですが、日本語のレベルアップには力を入れています。
弊社が日本語のレベルアップに力を入れていることは、入社後も変わりません。
(注1:日本語能力試験のレベルのこと、一番やさしいレベルがN5、一番難しいレベルがN1)
⑦外国人スタッフに対してキャリアアッププラン等ありますか?
キャリアアップというより、スキルアッププランになるのかもしれませんが、これも国籍関係なく、日本人社員と同じです。ある技能や能力が、仕事に活かせるレベルにスキルアップした時に手当が付くようにしています。
日本人社員の事例ですと、簿記や生け花等、仕事に活かすことのできるレベルにスキルアップした社員には、手当を付けています。
外国人社員の中に、日本語以外に英語の勉強をしている人がいます。その社員は英語の語学学校に通ってTOEICのビジネスレベルを目標に、今猛勉強中です。その社員の英語力が、ビジネスレベルに到達し英語を仕事に活かせるようになったら英語のスキルアップ手当を付ける予定にしています。
⑧外国人スタッフと日本人社員の方との交流等はどんなかんじですか?
弊社では、現場のスタッフが遊びに連れて行ってくれたりしています。先日も六甲山に遊びに行ったそうです。
⑨外国人スタッフの方々の生活面でのフォローは何かされていますか?
弊社は社員寮がありますが、その寮を使っている外国人社員は現在3人です。あとの3人は結婚している方で、ご家族と住んでいて自立しています。
皆さん、地元の行事に参加されたりして地域に馴染んでいらっしゃいます。生活面でも不自由がある等言われたことはなく、こちらからのフォローは特別していないですね。今まで、特に困った問題もなかったです。
⑩外国人採用を考えておられる同業他社の方へのアドバイスがあれば、お願いします。
弊社の外国人雇用は上手くいっていると思います。今まで何か困ったことがあったかもしれませんが、特に思い出せん。ですが、最初のうちは顧問の行政書士さんに相談しながら書類作成を含め、自社で雇用を進めてきました。
比較的新しい特定技能の方も登録支援機関を通さず自社支援でしています。自社で採用から雇用支援まで、ほぼ問題なく進めてこられたのは、外国人の方と最初の段階からキッチリと話をしてきたからだと思います。
例えば、採用時に今までの学歴や経歴等の確認をします。履歴書を見ながら本人が言っていることと相違がないか正直に話してもらって書類作成していきます。
以前、元技能実習生だったという人が面接にやってきました。その方の履歴書を見ながら本人の学歴や経歴を伺ったところ、履歴書と本人の話が違っていました。
結局は採用に至りませんでしたが、履歴書の確認の段階から、おかしいと思う事はとことん腹を割って話しています。それに、日本人社員もそうですが、まめにコミュニケーションをとることにも気を付けています。
インタビューの内容は以上になります。
和田様には、大変貴重なお話とお写真のご提供を頂きました。
年末年始のお忙しい中、ご協力頂き誠にありがとうございました。
陶湶御所坊様お料理(お写真のご提供:陶湶御所坊様)
陶湶御所坊様での外国人雇用が上手くいっている理由
ところで、私の感じたことで恐縮ですが、今回の陶湶御所坊様で外国人雇用が上手くいっている理由を書いてみたいと思います。
1,人事・総務ご担当和田様のお人柄が外国人雇用の担当者に向いている
「外国人雇用の担当者」というより、国籍関係なく人事管理に向いている方が人事・総務のお仕事をされているという点は非常に良いと思いました。
会社が小規模になると難しいかもしれませんが、専任の担当者がいるということはとても必要な事です。社長自らが担当者になったりしている会社様もありますが、本業でお忙しい為、お仕事に集中できなくなります。
また、外国人の窓口になっている担当者が、コミュニケーション能力が高く、難しいことにも果敢に取り組めるという方なら外国人雇用の担当者にピッタリです。
陶湶御所坊様の場合は、専任の窓口の方がいて、尚且つ、その専任の方(和田様)が人事管理に向いている方であることは、大きいと思いました。
2,専門家にアドバイスを受けながら会社と人材が協力して書類作成している
外国人雇用も、就労ビザも非常に複雑で、知識も必要です。幸い、陶湶御所坊様には顧問の行政書士の方がいて相談できる体制になっています。
雇用予定の外国人の方と会社が協力しながら、正しい書類を作り、適正な外国人雇用をしておられるところが素晴らしいと思いました。
3,国籍関係なく、外国人と日本人が切磋琢磨しながら働ける環境にあり、スキルを評価してもらえる
人事のご担当者様が、国籍関係なく人材の方の能力、人柄、スキルが会社でどう活かせるかを、人材の方とよくよく話しながら、採用と人材育成に取り組んでいると思います。スタッフの能力を上手く活かしておられると感じました。
4,外国人社員の方々も非常に努力家で向上心が強い
お話を伺っていると、外国人社員の方々も向上心が強く努力家である印象を受けました。また、コミュニケーション能力も高いと思います。ご自分の目的をお持ちで、何事にも積極的であるから、雇用する方もされる方もお仕事がしやすいのではないでしょうか。
外国人採用前後に特に注意すること
当事務所には、外国人採用時のご相談の他、「今持っているビザの更新をしたところ、不許可になった」というご相談がとても多いです。
それらのご相談の共通点は以下の5点になります。
1,1年前に人材紹介会社や語学学校から人材を紹介された
2,書類は行政書士等のプロが作るから大丈夫、会社からは言われた書類を集めてサインするだけと指示された
3,経営者(担当者)自身が、外国人雇用や就労ビザについての注意が分かっていなかった(或いは、説明を受けてなかった)
4,採用時の入管への手続きを任せきりにしていて、作成書類の基本的な箇所も確認していなかった
5,作成した書類を人材紹介会社や語学学校からもらっていなかった
上記5点がある会社は、外国人雇用後の更新時に「ビザ更新が不許可」になる等問題が出てくる可能性が高いです。
ちなみに今回のブログでご紹介した陶湶御所坊の和田様は外国人採用についての就労ビザのポイントや注意点をよく理解されていました。書類作成と書類収集についても積極的に取り組んでおられて、書類もしっかり確認されている印象でした。
外国人採用の時は、上記5つを踏まえて以下の4点にご注意ください。
①外国人採用を考え始めたら、外国人採用時に気を付ける必要最低限の知識を調べておく
人材紹介会社や語学学校等の説明に対応できるだけの知識を入れておくことは非常に大切です。
※当事務所のホームページを確認して頂くだけでも知識はつきます。
是非ご覧ください。
(以下のリンクは宿泊施設関連等のページです)
➡ホテル・旅館等での外国人雇用と就労ビザ
➡技術・人文知識・国際業務ビザで許容される実務研修
➡ホテル・旅館の就労ビザ許可不許可事例
➡外国人雇用の注意点
②外国人採用を考え始めたら、信用して相談できる入管申請や就労ビザに詳しい行政書士を探す
行政書士でも専門分野がいろいろありますので、入管申請が外国人雇用、就労ビザに詳しい行政書士を探してください。陶湶御所坊の和田様も、最初は顧問の行政書士の方に相談しながら知識をつけていかれたそうです。
ところで、行政書士の探し方ですが、検索でホームページを確認し、無料相談を申し込むか、知り合い経由の紹介というのが一般的ではないでしょうか?
できれば何人かに会ってみて、ご自分と相性の良い行政書士を探すのが良いかもしれません。
当事務所も無料相談はあります。
どうぞお気軽に「お問い合わせ」からご相談ください。
➡お問い合わせ
③入管へ申請する書類は必ず確認してから署名する
「時間がないから」という理由で書類の確認をしていない担当者や経営者がいらっしゃいます。ですが、書類作成者に、入管に提出する書類の説明をしてもらうことをおすすめします。
これを怠っていた場合に、1年後の更新ができない状況につながることがあるのです。そればかりか、その「不許可」になった書類は入管局に記録が残りますので、会社様にとっても良くないことです。
更新で不許可になるパターンで、よく相談があるのが、書類に書いてある仕事内容と実際させている仕事内容が違うという事です。人材紹介会社や語学学校ではビザが下りやすいように実際と違う職種を書いていることがありますのでご注意ください。
もちろん、大変良い人材紹介会社や語学学校もあれば、実際と違う職種を書いてくるひどい人材紹介会社や語学学校もあります。それを見極める為にも上記①と②が重要になってきます。
④作成した書類は必ずもらって保存する
最初に入管局に申請した書類は、1年後(或いは3,5年後等)の更新の時に確認できるようにしておいてください。
その書類があれば、それを基に更新書類を外国人の方が自分で作成できるかもしれませんし、齟齬が無いように確認もできます。それにもしも万一、不許可になった場合その原因を突き止め、リカバリーできるかもしれません。
陶湶御所坊様客室(お写真のご提供:陶湶御所坊様)
今回のブログでは、外国人雇用の優良事例とも言える陶湶御所坊様をご紹介させて頂きましたが、如何でしたでしょうか?
外国人雇用は、手続きが面倒で非常に複雑です。ですが、経営者(担当者)様には簡単に考えておられる方が意外にも多いです。
外国人を雇用する場合は、外国人の就労やビザに詳しい専門家に「可能な仕事内容」や「取得要件」を確認することを強くおすすめします。
外国人社員は、是非、適正な雇用をお願い申し上げます。