技術・人文知識・国際業務ビザで許容される実務研修

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会社に入社後、採用当初等に現場で一定の実務研修期間がある会社も多いです。

ですが、業界や会社によっては、当該実務研修期間に行う活動のみを見ると、「技術・人文知識・国際業務」のビザに該当しない活動もあります。このような場合はどうすればよいのでしょうか?

技術・人文知識・国際業務ビザで許容される実務研修の取扱い

外国人が「技術・人文知識・国際業務」のビザ(在留資格)を取得し日本で仕事をするためには,このビザに合う活動である「学術上の素養を背景とする一定水準以上の業務」に従事することが必要です。

しかし、入社後、採用当初等に一定の実務研修期間がある会社の場合、業界や会社によっては、当該実務研修期間に行う活動のみを見ると、「技術・人文知識・国際業務」のビザに該当しない活動もあります。例えば、ホテル等の宿泊施設や飲食店での接客、小売店の店頭における販売業務、工場のライン業務等です。

ですが、それらの業務が日本人の大卒社員等に対しても同様に行われる実務研修の一環で、在留期間中の活動を全体として捉えて在留期間の大半を占めるようなものではない場合は、その相当性を判断した上でこの現場での実務研修活動を「技術・人文知識・国際業務」の在留資格内で認められています。

1,「在留期間中」の考え方
この研修期間を含めた在留資格該当性の判断は,「在留期間中の活動を全体として捉えて判断する」ということです。

ここでいう「在留期間中」とは,一回の許可毎に決定される「在留期間」を意味するものではありません。雇用契約書や研修計画に係る企業側の説明資料等の記載から、雇用予定の外国人が今後日本で活動することが想定される「技術・人文知識・国際業務」ビザをもって在留する期間全体を意味します。

そのため、例えば,今後相当期間日本で「技術・人文知識・国際業務」に該当する仕事に従事することが予定されている方(雇用期間の定めなく常勤の職員として雇用された方など)が、在留期間「1年」を決定された場合,決定された1年間全て実務研修に従事することも想定されます。

しかし、雇用契約期間が3年間のみで契約更新も予定されていないような場合、採用から2年間実務研修を行う、といったような申請は認められないこととなります。

なお、採用から1年間を超えて実務研修に従事するような申請については、下記2に記載する研修計画の提出を求められ、実務研修期間の合理性を審査されます。

2,研修計画等
研修期間として、部分的に捉えれば「技術・人文知識・国際業務」ビザに該当しない仕事を行う必要がある場合、必要に応じ受入れる会社に対し日本人社員を含めた入社後のキャリアステップ及び各段階における具体的職務内容を示す資料の提出を求められることもあります。

この実務研修に従事することについての相当性を判断するに当たっては,この実務研修が外国人社員だけに設定されている場合や、日本人社員との差異が設けられているような研修は合理的な理由(日本語研修を目的としたようなもの等)がある場合を除き、この実務研修に従事する相当性があるとは認められません。

なお、採用当初に行われる実務研修の他、キャリアステップの一環として契約期間の途中で実施されるような実務研修についても同様に取り扱われます。

3,在留期間の決定について
実務研修期間がある場合、実務研修を修了した後、入管局は「技術・人文知識・国際業務」に該当する仕事内容に移行していることを確認する必要があります。

そのため、在留資格決定時等には原則として在留期間「1年」の決定となります。そして、在留期間更新時に当初の予定を超えて実務研修に従事している場合はその事情を入管局に説明しなければなりません。その説明の内容に合理的な理由がない場合,在留期間の更新が認められないことになります。

技術・人文知識・国際業務ビザの実務研修から見る許可事例

  • (1)日本の大学の文学部を卒業し総合食料品店の本社の総合職として期間の定めなく採用された者が、採用当初2年間実務研修としてスーパーマーケットの店舗において商品の陳列,レジ打ち,接客及び現場における顧客のニーズ等を修得するものであり、同社のキャリアステッププランでは日本人の大卒者と同様に2年の研修を修了した後に、本社の営業部門や管理部門,グループ内の貿易会社等において幹部候補者として営業や海外業務に従事することとなっているもの。

  • (2)日本の専門学校の観光・レジャーサービス学科において、観光地理,旅行業務,セールスマーケティング,プレゼンテーション,ホスピタリティ論等を履修した者が、大型リゾートホテルにおいて総合職として採用されフロント業務,レストラン業務,客室業務等についてもシフトにより担当するとして申請があった。

    業務内容の詳細を求めたところ、一部にレストランにおける接客,客室備品オーダー対応等「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に該当しない業務が含まれていた。

    しかし、申請人は総合職として雇用されており主としてフロントでの翻訳・通訳業務,予約管理,ロビーにおけるコンシェルジュ業務,顧客満足度分析等を行うものであり、また、他の総合職採用の日本人従業員と同様の業務であることが判明したもの。

技術・人文知識・国際業務ビザの実務研修から見る不許可事例

  • (1)日本の大学の経営学部を卒業した者から飲食チェーンを経営する企業の本社において管理者候補として採用されたとして申請があった。

    しかし、あらかじめ「技術・人文知識・国際業務」に該当する業務に従事することが確約されているものではなく、数年間に及び期間未確定の飲食店店舗における接客や調理等の実務経験を経て、選抜された者のみが最終的に「技術・人文知識・国際業務」に該当する業務へ従事することとなるようなキャリアステッププランであった。

    そのため、「技術・人文知識・国際業務」に該当する業務に従事するものとして採用された者に一律に課される実務研修とは認められず、不許可となったもの。

  • (2)日本の専門学校卒業後ホテルにおいて、予約管理,通訳業務を行うフロントスタッフとして採用され、入社当初は研修の一環として1年間はレストランでの配膳業務,客室清掃業務にも従事するとして申請があった。

    しかし、当該ホテルにおいて過去に同様の理由で採用された外国人が当初の研修予定を大幅に超え引き続き在留資格該当性のないレストランでの配膳業務,客室清掃等に従事していることが判明し不許可となったもの。