小売業での外国人雇用と就労ビザ

大都市の高級ブランドショップや家電量販店、百貨店等、小売店では外国人の販売員さんが対応しているところが多いですね。そして、地方都市でもコンビニ、ドラッグストア等で外国人留学生らしき方がお仕事されている姿はよく見かけます。外国人材がなくてはならない戦力になっています。

小売業の外国人雇用とビザ

それでは、小売店の接客販売業で外国人雇用をするには、どのようなビザがあるのでしょうか?
小売店の接客販売業は店頭での業務になりますので、接客販売業務の他にレジ打ちや在庫管理、掃除などのお仕事も入ってくると思います。

これらの店頭業務と接客販売業務の割合や、外国語を使う頻度、店頭に来る外国人の割合等によって取得する就労ビザ(就労できる在留資格)の種類は違ってきます。なぜなら、就労ビザは種類によって就労制限があるからです。

接客・販売業では、就労制限のある就労ビザの外国人を雇用せず、就労制限がなく、一番雇用しやすい身分系のビザを持つ外国人を雇用するということも考えられます。また、週28時間以内でアルバイトができる「資格外活動許可」を取得している留学生や、同じく「資格外活動許可」を取得している家族滞在ビザを持つ外国人を雇用していることも多いでしょう。

以下は、小売業(接客・販売)で雇用されている外国人の主なビザのご説明になります。

小売業での技術・人文知識・国際業務ビザ

この「技術・人文知識・国際業務ビザ」というのは、大学等で学んだ専門分野の技術・知識と関連性のある業務や、外国人特有の感性を必要とする業務に従事するための事務系のビザです。小売店での店頭販売や接客業でこのビザを取るのは難しく、証明書類も多く必要です。

以下は主な業務として「販売」や「接客」に関わる場合の「技術・人文知識・国際業務ビザ」申請のポイントと注意点になります。

  • 1、入管局(出入国在留管理庁)に「単純労働」とみなされる業務はできません。
    例えば:レジ業務、商品の陳列、商品の品出し、(通常の)販売、清掃等は「単純労働」とみなされてしまいます。 

  • 2、「通訳・翻訳」業務に従事する。
    単に 「通常の販売」だと、「立ち仕事の単純労働」とみなされてしまう可能性が高いです。接客販売業務で採用する場合は、「外国人客の多い店舗」での「外国人客相手の通訳・翻訳伴う、カウンセリング販売や専門的な商品説明を伴う高度な販売であることを説明します。

    ただし、それには裏付けが必要です。そのお店の外国人客(採用予定申請人の母国の外国人客)が多いことを割合や数字で証明した裏付け資料が必要です。
    また、申請人が母国語を用いて行う業務に十分な業務量がなければなりません(通訳を伴う販売や接客、商品説明やポップの翻訳等、その申請人にしかできない仕事が十分あること)

    ※なお、 「通訳・翻訳業務」や母国語の語学指導のお仕事は、短大・大学・大学院を卒業していれば出身の学部・学科を問わず実務経験がなくても従事できます。しかし「専門士」の専門学校卒業生は専門学校で翻訳・通訳を勉強していなければいけません。

  • 専攻科目と従事しようとする業務内容との間に関連性があること。
    たとえば:
    ・日本の外国語の専門学校を卒業し、「通訳・翻訳」を学んでいる中国人の方が中国語圏からのお客様が多い免税店で「通訳を伴う高度な販売職」に従事する。
    ・日本の服飾・ファッション系の専門学校を卒業した中国人の方が、「ファッションに伴う洋服の縫製や素材等」の専門知識等を活かし、高級なブランド商品を中国語圏から来られたお客様にご説明し購入頂く。

  • 4、補強書類をつける。
    補強書類として、申請人が実際お仕事をするお店の外国人の割合を示す資料を用意したり、お店や商品の写真を付けた方が良いです。特にお店の外国人客の割合を示す資料は提出していなければ、「追加書類」として後で連絡がくる可能性があります。その時に慌てないように申請時に提出しましょう。

  • 5、派遣社員でも「技術・人文知識・国際業務ビザ」は取れます。
    販売職の場合、派遣社員ということもよくあるかと思います。
    派遣社員は派遣会社、つまり 派遣元に雇用されています。派遣会社に雇用された社員が派遣先の店舗等で働くことになります。派遣期間が「1か月毎の更新」でもビザは取れますが、雇用条件書等には必ず「今後も随時契約更新予定です」と入れておいた方がよいでしょう。

  • 6、店頭や現場の実務研修
    もしも、店舗ではなく本部の営業・マーケティング、経理や広報などの事務社員として外国人を採用し、新入社員研修(店頭や現場での実務研修)で現場に出なくてはいけない場合は申請時に入管局に報告してください。その報告のないまま、本部の外国人社員を店頭で通常の接客販売業務等をさせていたら、最悪の場合、虚偽申請をしたとして外国人と雇用企業の双方が処罰の対象となってしまうかもしれません。十分ご注意ください。

  • 7、店頭での業務に注意
    「技術・人文知識・国際業務ビザ」は高度な専門性や技術・知識を持っている外国人のビザになりますので、レジ業務、商品の陳列、商品の品出し、(通常の)販売、清掃等はできません。ご注意ください。

尚、店舗ではなく本部の営業・マーケティング、経理や広報などの事務社員として外国人を採用する場合:詳しくは➡「技術・人文知識・国際業務ビザ」

「技術・人文知識・国際業務ビザで許容される実務研修」について詳しくはこちら
「派遣で外国人を雇用」について詳しくはこちら

小売業での外国人雇用とその他のビザ

  • 1、留学ビザ、家族滞在ビザ
    決められた時間内(週28時間)で、資格外活動許可を取得し、アルバイトできるビザです。


    「アルバイトで外国人を雇用」について詳しくはこちら
    「家族滞在ビザ」について詳しくはこちら

  • 2、身分系ビザ
    永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者の方たちが持つビザのことを「身分系ビザ」とか「身分・地位に基づく在留資格(ビザ)」等と言います。身分系ビザは就労活動に制限がないため雇用する側にとっては一番雇用しやすい外国人です。


    「身分系ビザ」について詳しくはこちら

  • 3、特定活動46号ビザ
    2020年2月改定の日本の大卒で高度な日本語能力を有する外国人が取得可能なビザです。小売店においては、仕入れ,商品企画や,通訳を兼ねた接客販売業務を行う業務が可能です。日本人に対する接客販売業務を行うこともできます。

    また、商品の陳列や品出し作業、店舗の清掃も付随業務として認められていますが、これらの業務にのみ従事することは認められません。ご注意ください。

    この特定活動46号ビザは、上記1の「技術・人文知識・国際業務ビザ」よりも現場や店頭に立つ外国人に合ったビザですし、インバウンド業には最適なビザと言えますから、今後、小売業でもこの特定活動46号ビザを取得する外国人材は増えてくるでしょう。


    「特定活動46号」ビザについて詳しくはこちら


出典:
新たな外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組「在留資格一覧表」(出入国在留管理庁)
留学生の就職支援に係る「特定活動」(本邦大学卒業者)についてのガイドライン




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