建設業での外国人雇用と就労ビザ

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建設業界は、専門性の高い技術・知識系のビザをもつ外国人から、建設現場系のビザをもつ外国人まで、雇用される外国人のビザの種類が大変幅広い業界と言えます。

建設業界の外国人材受入れ状況

建設分野で活躍する外国人の数は約11万人で、全産業の約6.4%。
2022年の在留資格別では、技能実習生が最多で約7万人です。
(技能実習制度は実習制度なので就労制度ではありません)
特定技能外国人については、2019年度に制度が開始され、2023年12月末時点では、建設の特定技能在留外国人数は、24,433人で、人数は増加中です。
2022年4月に、2号特定技能外国人が建設分野において初認定されました。
(2023年12月末現在:30人)

出典:
建設分野における外国人材の受入れ(国土交通省)
外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組(令和6年3月更新

建設業界の現場現状

建設業では、少子高齢化に伴う人手不足が深刻という問題以外にも問題・課題も多いです。例えば、建設業界は様々な現場で就労することから、管理の目が行き届きにくく他産業と比べて雇用管理が難しい業界です。そのうえ、季節や受注状況によって仕事量が変動し報酬水準も安定的ではありません。そのため、技能実習生の失踪の割合も多くなっており、失踪した実習生が不法就労 の状態でまた建設現場で働くという現状があります。
「建設分野の問題・課題解決から独自の仕組み構築」詳しくはこちら

建設業での外国人雇用とビザ

建設業での外国人雇用のビザは、専門性の高い技術・知識系のビザと建設現場系のビザがあります。

1,専門性の高い技術・知識系のビザ
専門性の高い技術・知識をもつ外国人は、一般的に、「技術・人文知識・国際業務」というビザ(在留資格)での雇用になります。

このビザは、文系の仕事では、人事総務の仕事、会計の仕事、マーケティング・営業の仕事、海外との通訳翻訳等があり、理系の仕事では、設計、技術開発等の技術職があります。「技術・人文知識・国際業務」ビザは、大学等で学んだ専攻と関連する職務で雇用される場合に取得できます。

「技術・人文知識・国際業務ビザ」について詳しくはこちら

入管局(出入国在留管理庁)のホームページに「技術・人文知識・国際業務」ビザでの建設関係の許可事例 がありましたので以下を抜粋しました。

  • ①日本の大学を卒業した留学生に係る許可事例
    ・建築工学を専攻して日本の大学を卒業し、日本の建設会社との契約に基づき月額約40万円の報酬を受けて建設技術の基礎及び応用研究,国内外の建設事情調査等の業務に従事するもの。

    ・社会基盤工学を専攻して日本の大学院博士課程を修了し同大学の生産技術研究所に勤務した後、日本の土木・建設コンサルタント会社との契約に基づき月額約30万円の報酬を受けて土木及び建築における研究開発・解析・構造設計に係る業務に従事するもの。

  • ②日本の専門学校を卒業し,専門士の称号を付与された留学生に係る許可事例
    ・建築室内設計科を卒業した者が、日本の建築設計・設計監理、建築積算を業務内容とする企業との契約に基づき建築積算業務に従事するもの。

 


2,建設現場系のビザ
建設現場系ビザの場合は、技能実習ビザ特定技能ビザなどでの雇用になります。

また、就労ビザではありませんが、就労制限のない身分系のビザ(「日本人の配偶者等」「永住者」「永住者の配偶者等」「定住者」の在留資格)をもつ外国人の雇用もあります。この身分系のビザをもつ外国人は雇用する側にとっては、就労制限がないので一番雇用しやすいと言えます

そして、週28時間以内でアルバイトができる「資格外活動許可」を取得している留学生や家族滞在ビザを持つ外国人のアルバイト雇用も、建設現場ではあるかもしれません。

身分系のビザについてはこちら
家族滞在ビザについてはこちら
週28時間以内の留学生等のアルバイトと「資格外活動許可」についてはこちら

3,建設業技能実習ビザ基準の強化
技能実習制度において、建設業では他産業に比べ失踪者が多い状況です。その背景には現場ごとに就労場所が変わり管理の目が行き届きにくい点や、季節や仕事の繁閑により報酬が変動する点等の業界の特性が挙げられます。こうした特性を踏まえて特定技能ビザでは建設業特有の基準を設けることとしました。

技能実習ビザについても修了後は試験免除で特定技能での就労が可能になることから受入れ基準について一定の整合を図る必要があります。このため、2020年1月以降に受理された技能実習実施計画について受入れ基準が強化されることになりました。

<建設業技能実習ビザ概要>

  • ①目的
    国際技能移転、国際協力

  • ②対象者のレベル
    一定の経験あり
    (ただし例外的に未経験者も対象)

  • ③在留期間
    2号:2年以内 、3号:2年以内

  • ④人材紹介を行う主体
    監理団体からの人材紹介

  • ⑤教育
    原則入国後に、日本語、生活知識等(原則2ヶ月)
    ※入国前講習を実施する場合、入国後講習の期間短縮あり

  • ⑥行政手続
    ・法務大臣による在留資格審査
    ・外国人技能実習機構への技能実習計画の認可届出、実習実施状況の届出

  • ⑦監理
    監理団体による訪問指導

  • ⑧2020年1月以降受入れ基準の強化
    建設業法第3条の許可の取得
    月給制の採用
    建設キャリアアップシステム(CCUS)への登録(事業者・技能者登録)
    ・技能実習生の受入れ人数枠の設定
    (常勤雇用者数(技能実習生や特定技能外国人等除く人数)を超えないことという基準を2022年4月から適用)
    ※常勤雇用者9人未満の事業者は注意

  • ⑨建設の職種・作業(22職種33作業)
    (令和5年10月31日時点)
  • ⑩転職
    転職には、雇用先、監理団体の同意を得て、実習 計画の変更等が必要で、事実上困難です。
    ※受入企業先の倒産、技能実習生に対する人権侵害行為や賃金、残業代の支払いがされない等の問題が起こった場合は、技能実習生の保護のため技能実習生の転籍措置に当たる転職は可能です。


技能実習サポートページはこちら
技能実習ビザについて詳しくはこちら


4,建設業特定技能ビザ見直しと制度改善

2022年8月30日の閣議決定により、特定技能の在留資格における受入れ見込数の見直しと制度の改善について、制度の運用に関する方針(分野別運用方針)の変更が行われました。➡詳しくはこちら

①特定技能外国人の受入れ見込数について
 各特定産業分野における受入れ見込数は政府基本方針に基づいて、大きな経済情勢の変化が生じない限り、1号特定技能外国人の受入れの上限として運用されることになり、令和6年3月末までの受入れ上限となっています。
建設分野においては、当面、見込数を最大3万4,000 人とし、これを1号特定技能外国人の受入れの上限として運用するとのことです。

②制度の改善➡建設分野の業務区分統合
従来、19に細分化されていた建設分野の業務区分について、訓練、各種研修の実施等により、特定技能外国人の安全性等を担保しつつ、業務区分が3つに統合されました。

建設分野では、区分の統合に併せて、これまで特定技能に含まれていなかった建設業に係る作業についても、全て整理後の業務区分に取り込み、これにより、建設関係の技能実習職種を含む建設業に係る全ての作業が特定技能の対象となりました。

<建設業特定技能ビザ概要>

  • ①目的・受入れ見込み数
    目的は担い手確保
    受入れ見込み数は34,000人。(令和6年3月末までの受入れ上限)

  • ②対象者のレベル
    即戦力となる人材、技能実習2号終了レベル
    (技能検定3級・日本語能力N4レベル)

  • ③在留期間
    1号:5年 2号:制限なし

  • ④人材紹介を行う主体
    (一社)建設技能人材機構(JAC)による無料人材紹介を受けることが可能(義務ではない)
    ※有料職業紹介事業者からの紹介は不可

  • ⑤教育
    政府間協力に基づき、入国前に、JACと提携する建設職業訓練校等による技能教育、N4レベルの日本語教育を実施(6~8ヶ月(想定))

  • ⑥行政手続
    ・国土交通大臣による受入計画認定、国土交通省への受入報告
    ・法務大臣による在留資格審査
    ・法務大臣への支援計画提出
    ・地方入管局への就労状況等の届出

  • ⑦監理
    適正就労監理機関(FITS)による巡回指導又は国の監査

  • ⑧建設分野人材基準
    特定技能1号:
    試験合格ルートと技能実習等からの切替ルートの2パターン存在。
    在留期間は通算5年、家族の帯同は原則不可。

    特定技能2号:
    在留期限の更新上限がなく、家族帯同も可能な在留資格。
    班長として一定の実務経験等が必要。

  • ⑨建設分野特定技能1号人材ルート
    ルート1:試験合格ルート
    以下㋐と㋑の両方に合格
    ㋐技能評価試験
    「技能検定3級」
    又は「建設分野特定技能1号評価試験」
    ㋑日本語試験
    「国際交流基金日本語基礎テスト」
    又は「日本語能力試験(N4以上)」
    ※㋐・㋑の試験は海外を基本に国内でも実施


    ルート2:技能実習2号経験者(試験免除者)
    ・技能実習2号(技能実習3号も可)を良好に修了した者
    ・外国人建設就労者受入事業の特定活動
    ※【特定活動】から【特定技能1号】 に変更することは可能
    ・技能実習3号を修了した者は、 技能実習2号を良好に修了した者 と同じ取扱い
    ※技能実習2号を良好に修了する見込みの者及び技能実習3号を修了する見込みの者は、 在留期間満了日の半年前から建設特定技能受入計画の認定申請を行うことが可能

  • ⑩制度の改善により建設分野の業務区分統合
    2022年8月30日の閣議決定により、従来、19に細分化されていた建設分野の業務区分について、訓練、各種研修の実施等により、特定技能外国人の安全性等を担保しつつ、業務区分が3つに統合されました。
    建設分野では、区分の統合に併せて、これまで特定技能に含まれていなかった建設業に係る作業についても、全て整理後の業務区分に取り込み、これにより、建設関係の技能実習職種を含む建設業に係る全ての作業が特定技能の対象となりました。

  • 出典:建設分野における外国人材の受入れ(国土交通省)

    ⑪建設分野における上乗せ規制の概要
    建設の受入企業は、以下㋐㋑2つの申請をし、それぞれ認定を受けることが必要。
    ㋐国土交通省(地方整備局等)への建設特定技能受入計画の申請
    ㋑出入国在留管理庁(地方出入国在留管理局)への在留資格審査の申請
    (他分野では㋑だけでよい)

    ・業種横断の基準に加え、建設分野の特性を踏まえて国土交通大臣が定める特定技能所属機関(受入企業)の基準を設定
    ・当該基準において、建設分野の受入企業は、受入計画を作成し、国土交通大臣による審査・認定を受けることを求める

    受入計画の認定基準
    ・受入企業は建設業法第3条の許可を受けていること
    ・受入企業及び1号特定技能外国人の建設キャリアアップシステムへの登録
    ・特定技能外国人受入事業実施法人(JAC)への加入及び当該法人が策定する行動規範の遵守
    ・特定技能外国人の報酬額が同等の技能を有する日本人と同等額以上、安定的な賃金支払い、技能習熟に応じた昇給
    ・賃金等の契約上の重要事項の書面での事前説明(外国人が十分に理解できる言語)
    ・1号特定技能外国人に対し、受入れ後、国土交通大臣が指定する講習または研修を受講させること
    ・国又は適正就労監理機関による受入計画の適正な履行に係る巡回指導の受入れ 等

  • ⑫転職
    自発的な意思に基づく転職は可能

特定技能ビザについて詳しくはこちら
特定技能サポートページはこちら

建設分野の問題・課題解決から独自の仕組み構築

建設分野の特定技能では、建設業技能実習生の失踪やその他の問題が多く発生したことから、これらの問題・課題に建設業界全体の取り組みとしてしっかりと対処していく必要がありました。

そこで、建設分野独自の問題に対して解決策につながる、他の産業分野にはない建設分野独自の適正な就労環境確保の仕組みが構築されました。

1,建設業での問題・課題

  • ①技能実習では、一因に一部の監理団体で十分な監理が行われていなかったと考えられることから、建設分野での失踪者・問題の発生が他分野に比べ突出した割合になっている。
    (技能実習制度では、建設分野の失踪者数が全体の失踪者数の約40%を占める)

  • ②建設業における技能実習実施企業の約8割に労働法令違反が発覚した。

  • ③建設業は、季節による受注量の変動が激しい業種であること、また、技能労働者の賃金は6割が日給制で仕事がないと手取り賃金が下がる等の問題がある。

  • ④建設業は、受注した工事ごとに就労する現場が変わるため、雇用主による労務管理、就労管理が難しい。また、現場ごとに他業者との接触が多く、引き抜き等の可能性が高い業界である。

  • ⑤現場管理は元請、労働者を雇用するのは下請の専門工事業者で、中小零細業者が大半である。

2,建設分野独自の仕組み
建設業分野では、特定技能外国人の受入れにあたり、全分野共通の仕組みに加え以下のような建設分野独自の仕組みを構築しました。

  • ①国交省による企業の受入計画の審査・認定
  • ②(一社)建設技能人材機構(JAC)に加入
  • 月給制を義務化
  • 建設キャリアアップシステムの登録義務化
  • ⑤建設業許可を要件化受入人数枠の設定
  • ⑥JACによる建設業界としての外国人受入れ
  • ⑦FITSによる適正就労監理
  • 建設業法第3条の許可をとることが必要
  • 巡回指導等により確認を受ける
  • ⑩技能の習熟に応じた昇給
  • 受入れ後講習

一般社団法人建設技能人材機構構(JAC)

一般社団法人建設技能人材機構構(JAC)(=特定技能外国人受入事業実施法人)

出典:建設分野における外国人材受入れの基本(国土交通省)「特定技能(建設分野)の関係機関」

低賃金や劣悪な労働環境、ブラック企業、アウトサイダー、外国人労働者の失踪や不法就労、社会保険未加入等の課題に業界を挙げて的確に対応するため設立されました。これら課題への対応として、建設分野での外国人の受入れに当たって、建設技能者全体の処遇改善、アウトサイダーやブラック企業の排除、他産業・他国と比して有為な外国人材の確保等の必要があります。

JACの役割として、公正競争・適正就労のルール遵守・ルールを守らない企業の排除や、無料職業紹介事業・特定技能1号評価試験合格者の就職あっせん等、民間職業紹介事業者の役割の代替があります。

JACは、告示に基づき、適正就労監理事業について、2015年からの建設就労者受入事業で巡回指導の実績・ノウハウを豊富に有し、国土交通省が認めた適正就労監理機関であるFITSに委託して実施します。

一般社団法人建設技能人材機構構(JAC)について詳しくはこちら(HP)

一般財団法人国際建設技能振興機構(FITS)

一般財団法人国際建設技能振興機構(FITS) (=適正就労監理機関)

FITSは、適正就労監理機関として、JACから委託を受け、全ての受入企業に対し、原則として1年に1回 以上、巡回訪問を実施します。 外国人の適正な就労環境確保のため、企業は、巡回指導を受入れる義務があります。 巡回指導の結果は、国土交通省とJACに報告されます。

適正就労監理機関としてのFITSの役割は、特定技能外国人の適正な就労環境確保です。巡回指導時の外国人との母国語での面談のほか母国語相談ホットラインを開設し、5か国語(中国語、ベトナム語、インドネシア 語、フィリピン語、英語)により外国人からの相談や苦情に丁寧に対応しています。

一般財団法人国際建設技能振興機構(FITS) について詳しくはこちら(HP)


出典:
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について(法務省 出入国在留管理庁HP)
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格:別紙3許可・不許可事例
「建設分野における外国人材の受入れ」(国土交通省)
新たな外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組(出入国在留管理庁:(令和6年3月更新)
外国人技能実習制度について (法務省 出入国在留管理庁 厚生労働省 人材開発統括官)
「建設分野の外国人材受入れガイドブック2020」建設技能人材研究会編著(大成出版社)
外国人材の活用(国土交通省HP)
特定技能における受入れ見込数の見直し及び制度の改善について(令和4年8月30日閣議決定)(出入国在留管理庁)


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