農業での外国人雇用と就労ビザ

農業分野でも外国人材は欠かせない存在となっておりますが、農業分野の就労ビザで圧倒的に多いのが技能実習ビザです。また、今後は特定技能ビザも増えてくるでしょう。
ただ、最近は、新型コロナウイルス感染症に伴う水際措置により、2021年1月から10月、12月から2022年2月の間は、外国人の新規入国はありませんでした。

それでは、農業分野の外国人材雇用状況からご覧ください。

農業分野の外国人材雇用状況


上の図(図1)でもある通り、農業分野で圧倒的に多いのが技能実習ビザ の外国人材です。

技能実習制度 は、経済発展・産業振興の担い手となる人材育成を目的とするために、開発途上国等から労働者を一定期間産業界に受け入れて、日本の技能・技術・知識を修得してもらう制度です。

この制度は、外国人技能実習生への技能等の移転を図り、その国の経済発展を担う人材育成を目的としたもので、日本の国際協力・国際貢献の重要な一翼を担っています。

農業分野においても全国の農業生産現場で多くの技能実習生を受け入れており、耕種農業や畜産農業の技能実習が行われています。


次に下の図(図2)は 「特定技能」ビザ の令和5年5月末の特定技能1号在留外国人数です。 特定技能1号在留外国人167,313人 のうち、農業分野20,274人です。

特定技能ビザは、2019年4月にできた新たな在留資格(通称:ビザ)です。この特定技能ビザは、人手不足が深刻な12分野に、専門性や技能を持っている外国人材を受け入れる特定技能制度のビザです。農業分野においても深刻化する人手不足に対応するために特定技能ビザは活用されています。


それでは、以下からは、技能実習ビザと特定技能ビザを中心に農業分野での外国人の雇用とビザについてご説明致します。

農業分野の技能実習ビザ

  • 1,目的
    技能実習法の目的は技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護であり、人材育成を通じた国際協力です。日本で培われた技能、技術又は知識を開発途上地域等へ移転を図り、開発途上地域等の経済発展を担う「人づくり」に寄与することです。特定技能と違って「実習目的」のビザです。また、技能実習は労働力の需給の調整手段として行ってはなりません。

  • 2,技能実習の期間
    技能実習期間は最長5年とされ、外国人技能実習機構から認定を受けた技能実習計画に基づいて、技能等の修
    得・習熟・熟達が図られます。1号は1年、2号は2年、3号は優良企業のみで、優良企業になれば更に2年雇用できます。

  • 3,技能実習でできる業務(図3)

上の図3は、農業の技能実習で、2号・3 号への「移行対象職種・作業」(2職種6作業)となっています。
「移行対象職種」とは、その職種に従事している技能実習生が第1号技能実習から第2・3号技能実習に移行することを認められる業務です。この図にある職種・作業は3年間雇用でき、また優良企業になれば5年間雇用できます。

  • 4,2017年9月から技能実習制度でできるようになったこと
    ・技能実習生は農作業以外に農畜産物を使用した加工の作業の実習を行うことができるようになりました。

    例えば、果物を材料としたジュース、ジャム等の製造、牛乳を原料としたチーズ等の製造、製造した商品の販売作業等です。ですが、それらの業務ばかりやらせてはいけません。加工作業などの関連業務の従事は実習時間全体の2分の1以下周辺業務の従事は実習時間全体の3分の1以下にしなければなりません。

    ・農協等が実習実施者となって、通年で技能実習生を受け入れることができるようになりました。
    (農作業請負方式技能実習)(下の図4)

※請負契約において、農業者(依頼者)の方が実習生に指示を行うことはできません。
※都道府県等の関与による一定の管理体制が必要です。

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農業分野の特定技能ビザ

  • 1,目的・受入れ見込み数
    特定技能ビザは上記のように2019年4月にできた新たなビザですが、人手不足が深刻な12分野に、専門性や技能を持っている外国人材を受け入れるためのビザです。農業分野においても深刻化する人手不足に対応するために活用されています。つまり「特定技能1号」ビザは就労が目的です。

    令和4年8月30日閣議決定では、特定技能における受入れ見込数の見直しがありました。農業分野は据え置きで、令和5年度末までは、当面、受入れ見込数を最大3万6,500人として運用するということです。

  • 2,特定技能の期間(下の図5)
    外国人材が日本で働ける期間は「通算」で5年までになります。
    特定技能制度では、外国人材に、
    ア、5年間継続して働いてもらう、
    イ、農閑期等には帰国し、通算で5年間になるまで働いてもらう、
    ア、イのどちらも可能です。

    以下の6にもありますが、農業分野は季節による作業 の繁閑がある等で、直接雇用だけではなく、派遣形態も可能です。

    上記の図のように半年ごとに帰国していたのでは手間も費用もかかります。
    ですので、農業でよくある働き方パターン①②をご紹介致します。

    ①直接雇用として
    1つの企業で野菜や果物を作り、農作業ができない時期にジャム等加工品を作るなど。
    ここでご注意頂きたいのが、以下の3にもありますが、「同じ農業者等の下で作業する日本人が普段から従事している関連業務(加工・運搬・販売の作業、冬場の除雪作業等)であれば従事することが可能」ということです。
    雇用している日本人が、冬場に加工品を作っているなら、特定技能外国人もこの業務が可能です。

    同じように考えれば、仮にその農家がレストラン経営もしていて、通常農作業をしている日本人が冬場にレストランに手伝いに行くという事も可能です。

    ただ、くれぐれもご注意頂きたいことは以下の2点です。
    ・可能な業務は同じ農業者等の下で作業する日本人が普段から従事している関連業務であること 
    ・関連業務にばかり従事することはできないということ 


    ②派遣の場合
    農協、農協出資法人、特区事業を実施している事業者等の派遣事業者が、特定技能外国人を直接雇用しています。
    その派遣業者に所属している特定技能外国人は、その派遣業者と契約のある農家に半年、3ヶ月、スポット的に働きに行きます。

  • 3、特定技能の業務・作業内容
    外国人材は、主として、
    ㋐耕種農業全般の作業(栽培管理、農産物の集出荷、選別等)
    ㋑畜産農業全般の作業(飼養管理、畜産物の集出荷、選別等)
    に従事することができます。

    ご注意として、その業務内容には、栽培管理又は飼養管理の業務が必ず含まれていることが必要です。例えば、農産物の選別の業務にのみ専ら従事させるとことはできません。

    付随業務として、同じ農業者等の下で作業する日本人が普段から従事している関連業務(加工・運搬・販売の作業、冬場の除雪作業等)にも従事することが可能です。が、これもご注意として、専ら関連業務にばかり従事することはできません。

  • 4、特定技能「農業」の人材基準
    特定技能「農業」の人材基準は

    ㋐農業分野の技能試験と基本的な日本語試験に合格するパターン

    技能実習の農業分野である耕種農業職種(3作業:施設園芸、畑作・野菜又は果樹)又は畜産農業職種(3作業:養豚、養鶏又は酪農)の2号を修了するパターン

    上記2パターンのどちらかが取得要件になります。㋑のパターンでの申請は㋐のパターンの試験が免除となります。

  • 5、受入れ機関等の条件
    「農業特定技能協議会」に参加し、必要な協力を行うこと
    (1号特定技能外国人を受け入れた日から4か月以内に協議会の構成員となること)

    ㋑農水省が行う調査又は指導に対し,必要な協力を行うこと

    直接雇用形態の場合、過去5年以内に労働者(技能実習生を含む)を少なくとも6か月以上継続して雇用した経験があること 等

    ㋒に関しては、令和4年8月30日閣議決定では制度の改善もありました。
    農業分野では特定技能所属機関に対して特に課す条件の緩和がありました。
    「これに準ずる経験」として緩和されました。例えば以下のような場合です。

    農業経営を継承する場合
    (子が農業経営を行う親の下で労務管理に関する業務を行っていた)
    ・事業を個人から法人化する場合
    (労務管理に関する業務の経験がある農業法人の従業員が新たに独立した等)

    上記のような場合で、継続して特定技能外国人を受け入れることができるよう、「労務管理に関する業務に従事した経験」などであっても、「これに準ずる経験」として要件として認め、特定技能外国人の受入れを可能となったのです。

  • 6,農業分野における特定技能雇用形態
    特定技能は他の分野とは違い雇用形態が2通りあります。
    (派遣形態は農業と漁業のみ)

    ㋐直接雇用
    労働者派遣
    (派遣事業者は、農協、農協出資法人、特区事業を実施している事業者等を想定)

    なぜ、農業は労働者派遣形態による受け入れの必要性があるのでしょうか?

    それは、農業分野は、
    ・冬場は農作業ができないなど、季節による作業の繁閑がある

    ・同じ地域であっても、作目による収穫や定植等の農作業のピーク時が異なる
    といった特性があります。

    農繁期の労働力の確保や複数の産地間での労働力の融通といった農業現場のニーズに対応するため、農業分野の事業者による直接雇用形態に加えて、労働者派遣形態により1号特定技能外国人を受け入れることが不可欠であるからなのです。

    なお、農業分野における特定技能雇用形態としては、上記2「農業でよくある働き方パターン①②」もご確認ください。

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特定技能ビザについてはこちら
特定技能制度についてはこちら


農業分野のその他のビザ

出典:
農業者の皆様へ特定技能外国人の受入れが始まりました!(農林水産省)
新たな外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組(出入国在留管理庁)
農業分野における新たな外国人材の受入れについて(令和5年3月農林水産省)
農業分野における外国人技能実習制度の概要(2021年)(全国農業会議所)
農業者の皆様へ 外国人技能実習制度について~特に押さえておくべきポイントとは~
外国人農業支援人材の受入れが始まります!~国家戦略特別区域農業支援外国人受入事業~





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