4月初旬に、農業分野で「技術・人文知識・国際業務ビザ」を取得することができました。
今回のブログでは、そのことを取り上げてみたいと思います。
農業分野で外国人が仕事をする場合、「技能実習」ビザか、「特定技能」ビザ がほとんどです。
私自身、農業分野で仕事をする外国人は、「技能実習」ビザか、「特定技能」ビザだと思っていました。また、周りのビザを専門にしている行政書士仲間や先輩に聞いても「証明が難しいのでは?」「聞いたことない」との反応でした。
ただ、下記の「農業での外国人雇用と就労ビザ」ページの「農業分野の外国人材雇用状況」の表にもありますように、少数ではありますが、専門的・技術的なビザを持つ外国人の方もいます。
農業分野の外国人材雇用状況はこちら➡農業での外国人雇用と就労ビザ
「技術・人文知識・国際業務ビザ」の条件を満たし、それをしっかり証明すれば、農業分野で「技術・人文知識・国際業務ビザ」を取得することは可能です。今回のブログでは以下のような内容でお話します。
今回のブログ内容:
・今回のケースは?
・どこにポイントおいて説明するか
・説明には必ず根拠となる書類を添える
・「技術・人文知識・国際業務ビザ」の条件を確認
・技術・人文知識・国際業務ビザの実務研修
・「農業分野で技術・人文知識・国際業務ビザを取得したい」との相談でよくある問題点
・入管局に丁寧に説明できていない会社が1年後に遭う困った事
・注意点として入管局が「知りたい事」を丁寧に説明すること
・会社と人材の方のベストマッチングがあって入管局への説明ができる
・ブログの最後に
1,今回のケースは?
まず、今回のケースは以下の通りです。
・人材の学歴と専攻:
国立大学の大学院卒
学位:修士(農学) 植物生産科学専攻。
母国では農業を専門とする大学を卒業、果樹の勉強をされている留学生。
・人材の職種:
大学と大学院で学んだ知識と技術を活かした技術開発
果実を使用したスイーツの企画開発と製造販売業務
・会社名と会社の特徴:
ハートスフードクリエーツ株式会社
(農業・飲食料品製造業・外食業など多岐に渡って事業を展開)
➡当事務所のブログ「2022年10月19日付:農業・飲食料品製造業・外食業など多岐に渡る企業の就労ビザについて」でご紹介した企業様です。
・雇用形態:正社員で雇用契約を結ぶ
2,どこにポイントおいて説明するか
技術・人文知識・国際業務ビザ申請の説明の基本は、大学等での専攻(学んだ学問)と会社での仕事内容の関連性です。
ですので、以下の2点をポイントにしての説明になるかと思います。
・大学等の成績証明書の科目名の中で、仕事内容と関連性のある科目の説明
・学んだ科目が仕事内容にどのように活かせるのかを詳しく説明
今回のケースで言えば、以下を基本にして説明しました。
・人材の方が大学や大学院を学んだ技術や知識を活かして、野菜や果物の栽培をすること。
・それらの野菜・果物を使った食事やスイーツの企画製造と販売を担当すること、
今回は、会社が人材の方にさせたい業務と、人材の方が会社でしたい業務がみごとに一致した、まさにベストマッチングなケースでした。
3,説明には必ず根拠となる書類を添える
さて、いくら「ベストマッチングなケース」でも、それを入管局に客観的に説明しなければなりません。
その為に根拠となる書類は以下のような書類を用意しました。
・人材の成績証明書
・職務内容についての補足説明書
(成績証明書の科目名の中で、職務内容と関係のある科目をピックアップし学んだ内容を説明。更に担当職務にどのように活かせるかを説明する書面)
ご注意ですが、入管局にある「必要書類」は受理されるための最低限の書類です。申請の時は説明内容の根拠となる書類を「補強」書類として添えた方が良いです。
それと、もちろん、私は農業のことや会社の職務内容のことについてはよくわかりません。ですので、今回に限らず、学んだ専攻科目や職務内容は会社の方や人材の方に教えて頂きながら書類作成をしなければなりません。
その為、会社の方や人材の方のご協力無くして書類作成はできません。今回もハートスフードクリエーツの社長、人事部ご担当者様、人材の方には大変協力して頂きました。
4,「技術・人文知識・国際業務ビザ」の条件を確認
次に、「技術・人文知識・国際業務ビザ」の条件についてです。
条件は簡単にまとめると以下のようになるかと思います。
①学歴、または一定年数の実務経験(職歴)があること
②大学の専攻等と業務の間に関連性があること
③日本の公私の機関(会社など)と雇用契約、請負契約等を結ぶこと
④契約を結んだ会社等の経営に安定性・継続性があること
⑤同一業務に従事する日本人と同等額以上の報酬をうけること
⑥外国人に素行不良、前科、過去の不良な在留事実がないか?外国人が届出等の義務を履行しているか?
今回の場合は、上記①~⑥について、聞き取りをしながら一つ一つ証明すれば問題ないと思いました。
(①、②、③については、「今回のケースは?」、「どこにポイントおいて説明するか」で書いた通りです。)
補足で④~⑥についての留意点を以下に書きました。
④会社の資料:会社によって提出する必要書類は違いますので、入管局のHP(在留資格「技術・人文知識・国際業務」)で確認して下さい。
⑤雇用条件:外国人を雇用する場合も日本人と同じ待遇・条件で雇用しなければなりません。外国人だから、日本人より給与額が少なくても良いと思っている経営者の方もたまにいますが、考えを改めて頂かなくてはいけません。「日本人と同等以上の待遇にすること」は、外国人雇用の基本です。
⑥外国人に関しての注意点:雇用予定の外国人が学生時代のアルバイトでオーバーワークしていないか、居住地の届出をきちんとしているか確認して下さい。
入管局HP:「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について
5,技術・人文知識・国際業務ビザの実務研修
ところで、農業やインバウンド関連、製造等の現業が関わる会社の新卒採用の場合は、特に、実務研修についても説明した方が良いです。
(当事務所のホームページでもご説明しています。)
技術・人文知識・国際業務ビザで許容される実務研修
業界や会社によっては、実務研修期間に行う活動を見ると、「技術・人文知識・国際業務」のビザに該当しない活動もあります。例えば,飲食店での接客や小売店の店頭における販売業務,工場のライン業務等がよくある事例です。このような場合は以下の3点に注意しながら入管局に説明した方が良いと思います。
・研修内容が日本人の大卒社員等に対しても同様に行われる実務研修の一環であること(もし、日本人社員との差異が設けられているような研修があれば,日本語研修を目的としている等、合理的な理由を説明する)
・研修で現業をさせるような場合は、その現業が研修後の業務(「技術・人文知識・国際業務」のビザで許可された業務)にどのように関係し、どのように役立つのか?
・研修内容、研修期間等を説明した研修プログラムを参考資料として入管局に提出する
今回のケースでも上記3点の①②③を説明し、③の資料を入管局に提出しました。
6,「農業分野で技術・人文知識・国際業務ビザを取得したい」との相談でよくある問題点
それでは、ここで、「農業分野で技術・人文知識・国際業務ビザを取得したい」等の相談でよくある問題点について、少々触れておきたいと思います。
当事務所は「就労ビザ」に特化している行政書士事務所で、その為、今までも農業法人から、「専門的な人材を雇いたい」、「特定技能や技能実習以外で人材を雇いたい」というご相談は時々ありました。
ですが、「技術・人文知識・国際業務ビザ」の取得条件を満たさない、或いは証明できないご相談がほとんどでした。
例えば、
・外国人の学歴が大卒ではない
・大卒だけど、大学での専攻と担当業務との関連性がない
・内定を出した会社の経営に安定性・継続性がない
・入管局に「単純作業」させるのでは?と疑われる可能性があるが、そうではないと証明できるだけの書類がない➡そのため入管局が「知りたい」と思っている事を丁寧に説明することができない
上記のようなことが問題点となり、申請が前に進まなくなってしまいました。
7,入管局に丁寧に説明できていない会社が1年後に遭う困った事
また、当事務所には、「入管局に丁寧に説明できていない会社が1年後に遭う困った事」についてのご相談もよくあります。つまりは、「ビザが1年後に更新できなかった」という相談です。
それらのご相談で共通しているのは以下のようなパターンです。
①インバウンド系や工場、農業等現場での仕事が多い会社に、人材紹介会社、語学学校等から「外国人を紹介します」との営業がくる
⇓
②恒常的に人手不足な為、人材を紹介してもらうことになるが、外国人の雇用が初めてである。その為、入管局に提出する書類や注意点がもちろん分からないが、人材紹介会社等からはその説明もないまま、「面倒な事や書類作成もこちらでしますよ」と言われる
⇓
③会社の責任者の方は「大丈夫かな?」と心配になりつつ、本業が忙しく任せきりになる。しかしビザも無事取得できたので、それ以上は気にしない。
⇓
④1年後、そのビザを更新しようとするが、「不許可」となってしまい、外国人スタッフは母国に帰国することになる
上記の④になってしまうのは、各ケースによって事情は様々です。
例えば
・人材を紹介した会社や語学学校の書類作成に問題がある
・会社の責任者や担当者が外国人雇用についてよくわからないまま更新の書類の作成をする
・外国人に任せきりに更新手続きをさせる
いずれにしてもこれらのご相談の困った共通点は、「入管局に許可をもらった仕事とは別の仕事をさせていて更新時に不許可になった」ということです。このパターンは多いので注意が必要です。
ケースによっては、コロナ禍もあってインバウンド系の会社は仕方ない部分もあったと思います。でも、それに関しての説明もしないまま、「外国人雇用」をいい加減に考えてしまったため「不許可」になったケースもありました。
8,注意点として入管局が「知りたい事」を丁寧に説明すること
上記の6と7でも書きましたが、入管局が「知りたい事」を丁寧に説明することはとても大切です。
特に、技術・人文知識・国際業務ビザは、就労制限が厳しく、入管局に「単純作業」させるのでは?と疑われる可能性がある案件も少なくありません。
今回のケースでも「農作業をさせるのではないですよね?」という「入管局が知りたい事」を丁寧に説明することを心がけました。
例えば
・オフィス業務であることの説明
・作った野菜や果物を活かして作る給食やスイーツの説明
・自社農場で専門家と共に研究する予定であることの説明。などです。
9,会社と人材の方のベストマッチングがあって入管局への説明ができる
さて、今回は会社様と人材の方のご協力もあり、無事に3年の、技術・人文知識・国際業務の在留資格(ビザ)の許可を頂く事ができました。
農業という現場との関りが中心となってくる職場で技術・人文知識・国際業務ビザを取ることが出来たのは、技術・人文知識・国際業務ビザの一番の基本ポイントである「大学等での専攻と業務の間に関連性がある」ことをしっかり説明したことだと思います。
ですが、この説明は、ハートスフードクリエーツ株式会社と人材の方のベストマッチングがあってのことです。会社が外国人材のもつ学問的知識や技術・能力を、自社のどの部分活かせば自社の発展につながるか、しっかりと考えておられなければ、申請書の説明はできません。
つまりは、会社と人材の方のベストマッチングがあるからこそ、入管局へ説得力のある説明ができるということです。
10,ブログの最後に
今回は、農業という技術・人文知識・国際業務ビザの取得がとても少ない分野で、ビザの書類作成と代行をさせて頂きました。
このケースについてご紹介しながら、技術・人文知識・国際業務ビザの取得には、一番の基本ポイントである「大学等での専攻と業務の間に関連性がある」ことをしっかり説明すること等や、関連する当事務所へのご相談事例のお話もさせて頂きました。
最後になりましたが、ハートスフードクリエーツ株式会社様と人材の方には、ご依頼とご協力頂きましたこと、この場をお借りして、心よりお礼申し上げます。