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外食業での外国人雇用と就労ビザ

外食業でのビザ

外食業での外国人雇用についてビザ(在留資格)の観点からご説明します。外食業では多数の外国人が働いています。多くは留学生や家族滞在のアルバイトであると思います。 留学生の場合、学校を卒業後そのまま勤務先の飲食店に就職を希望する方も多いのではないでしょうか。

飲食店で正社員としてのビザ(在留資格)を取りたい場合は、在留資格を「留学」から就労系のビザに変更しなければなりませんが、ビザの種類によってできる業務内容が違います。ですので、仕事内容によって、どのビザを取るかよく検討しなければなりません。

外食業の場合は、アルバイト時と同じようなホール係やレジ、調理補助での仕事内容、つまり現場系の業務も多く発生します。外食業は、申請するビザの種類によってはいきなり不許可になる可能性があります。ですので、ビザ専門の行政書士等に相談しながら申請することをおすすめします。

尚、各就労系ビザの基本的事項は、このページとそのリンク先に説明しております。
是非ご覧ください。

外食業での外国人雇用ビザ別数字

2019年から2020年にかけて、「特定技能」特定活動46号等の在留資格(ビザ)が出来て、現場系や接客系の産業分野での外国人雇用は更に広がりました。外食分野でも今後これらのビザの取得は多くなるでしょう。

下の図は、令和3年10月末時点の外食業(※飲食店、持ち帰り・配達飲食サービス業の計)の外国人労働者数です。上記しましたが、外食業での外国人のビザは留学生や家族滞在が多くなっています。

資料(厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和3年10月末時点)を基に農林水産省で作成)によると外国人労働者数は約18.2万人になっており、外食業で一番大きい比率を占めるビザは、やはり、58%の留学生や家族滞在等のビザです。留学生や家族滞在等のビザをもつ方たちは資格外活動許可を取って限られた時間内のアルバイトをしています。

その次に多いのが永住者等の身分系のビザになっており、全体の22%です。そして、3番目が専門・技術系の就労ビザを持つ外国人材で、全体の14%になっています。専門知識・技術系の就労ビザというと、「技術・人文知識・国際業務」ビザ「技能」ビザとなります。

資料:厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和3年10月末時点)を基に農林水産省で作成

以下は各ビザの説明になります。
(詳しいご説明はリンク先(青字)のページをご覧ください。)

1,外食業での技術・人文知識・国際業務ビザ
大学等で学んだ専門分野の技術・知識と関連性のある業務や、外国人特有の感性を必要とする業務に従事するための事務系のビザです。例えば、人事総務や会計の仕事、マーケティング・営業の仕事などになります。

また、店舗管理(店長)やスーパーバイザーの仕事でも取得することが可能ですが、雇用する会社は、飲食企業としてある程度の企業規模が必要です。小規模な飲食店の場合は、これらの事務系業務を専門に担当することは客観的にみて現実的ではなく、この業務を外国人にさせる必要性も感じられません。ですので、ある程度の規模がある、少なくとも複数の店舗を持ち、かつ店舗とは別に事務所を構えていることが必要でしょう。

そして、このビザは高度な専門性や技術・知識を持っている外国人のビザになりますので、ホールでの配膳や調理補助、洗い場作業はできません。ご注意ください。

それと、もう一つのご注意になりますが、「技術・人文知識・国際業務」ビザを取得予定の外国人で新入社員等に研修の一環として現場に行かせる場合のことです。現場研修での業務内容は入管局(出入国在留管理庁)から単純労働とみなされる業務が少なくありません。ですので、その現場での実務研修は申請時に必ず入管局に報告し、許可をもらってから現場に行かせるようにしなければなりません。

もし、入国管理局に報告をすることなく、現場に行かせてしまった場合は虚偽申請をしたとして会社側と外国人社員側双方が処罰される場合もあるのでご注意ください。


「技術・人文知識・国際業務」ビザで許容される実務研修についてはこちら
「技術・人文知識・国際業務ビザ」について詳しくはこちら

2,技能ビザ
外国人を調理師として雇用する場合は「技能」の在留資格(ビザ)に当たります。この技能ビザを取得するための要件は、10年以上の調理師としての実務経験がなければなりません。技能ビザは、熟練した技能が必要となる専門性の高いビザですので、調理補助、掃除、洗い場等の業務はできません。
また、外国料理の調理師のビザなので、居酒屋や日本料理店等の日本料理では、10年経験があっても技能ビザは取得できません。

「技能」ビザについて詳しくはこちら


3,留学ビザ・家族滞在ビザ
決められた時間内(週28時間:資格外活動許可)でアルバイトできます。


4,身分系ビザ
永住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・定住者ビザです。
身分系ビザは就労活動に制限がないため雇用する側にとっては一番雇用しやすい外国人です。

5,日本の食文化海外普及人材育成事業の「特定活動」ビザ
このビザは、日本料理の海外普及を目的に、調理の専門学校を卒業した外国人留学生が引き続き、日本国内の日本料理店で働きながら最長5年間、技術を学べる制度のビザでした 。

その後、2019年11月に、クールジャパンの議論において、日本料理以外の分野でも、教える技術が高い日本で学びたいとの意見がありました。このため一部改正がありました。調理又は製菓の専門学校を卒業した留学生が就職できる業務の幅が拡充されたのです。それで、日本料理以外の料理や製菓も対象となり、日本の食・食文化の海外普及の促進を行うビザになりました。


6,特定活動46号ビザ
2020年2月改定の日本の大卒で高度な日本語能力を有する外国人が取得可能なビザです。飲食店に採用された場合は、店舗管理業務や通訳を兼ねた接客業務を行うことが可能なビザです。外国人だけでなく、日本人に対する接客を行うことも可能ですが、厨房での皿洗いや清掃にのみ従事することは認められません。ご注意ください。

「特定活動46号」ビザについて詳しくはこちら


7,特定技能ビザ
外食業での特定技能ビザについては、以下にご説明しております。是非ご覧ください。

外食業での特定技能ビザ受入状況

「特定技能」ビザとは、2019年4月から始まった新しいビザ(在留資格)で、人材を確保することが困難な12分野の「特定産業分野」に外国人材を受入れる為のビザです。

外食産業分野においては、これまで就労ビザが取れなかったケースが多く、自店での仕事に慣れた優秀な留学生アルバイトでも学校を卒業すれば雇うことができない場合が多々見受けられました。

ですが、この特定技能ビザなら引き続き自店での雇用が可能になります。(ただし、できる業務が留学生時代と全く同じというわけにはいかないかもしれませんので、業務の確認が必要です。)そのため、今後の外食産業では、すでにアルバイトとして働いている外国人留学生を特定技能1号でフルタイム雇用に切り替えることが多くなるでしょう

 

令和4年9月末の特定技能1号在留外国人数は、108,699人です。そのうち外食業の人数は以下の表の通り3,946人です。

外食業の特定技能ビザ概要

2022年8月30日の閣議決定により、特定技能の在留資格における受入れ見込数の見直しと、制度の改善について、制度の運用に関する方針(分野別運用方針)の変更が行われました。➡ 詳しくはこちら

外食業分野の受入れ見込数について
各特定産業分野における受入れ見込数は政府基本方針に基づいて、大きな経済情勢の変化が生じない限り、1号特定技能外国人の受入れの上限として運用されることになり、令和6年3月末までの受入れ上限となっています。外食業分野においては、当面、受入れ見込数を最大3万500人とし、これを受入れの上限として運用するとのことです。

  • 1,受入れ見込み数
    上記の通り、外食業分野の受入れ見込数は最大3万500人で、これが受入れの上限。

  • 2,人材の基準
    以下の試験の合格者又は 「医療・福祉施設給食製造」の第2号技能実習を修了した者
    ①技能水準(試験区分)
    「外食業技能測定試験」 ((一社)外国人食品産業技能評価機構が実施)
    ②日本語能力水準
    「国際交流基金日本語基礎テスト」又は「日本語能力試験(N4以上)」

    試験情報についてはこちらから
    特定技能1号技能測定試験
    (外食業と飲食料品製造業の国内・国外試験情報)


  • 3,人材のイメージ
    飲食料品食品衛生に配慮した飲食物の取扱い、調理及び給仕に至る一連の業務を担い、管理することができる知識・技能を有する人材。

    ・食中毒の予防など衛生管理に関する知識・技能
    ・調理工程、器具の扱い等飲食物調理に関する知識・技能
    接客に必要な日本語、おもてなしの考え方等接客全般に関する知識・技能

  • 4,外国人が従事する業務
    ①1号特定技能外国人が従事する業務は、外食業全般(飲食物調理、接客、店舗管理)に主として従事すること。ただし、在留期間全体の一部の期間において「調理担当」など、特定の業務にのみ従事することも可能。

    ・ 飲食物調理:客に提供する飲食料品の調理、調整、製造を行うもの
    ・ 接客:客に飲食料品を提供する為に必要な飲食物調理以外の業務を行うもの
    ・ 店舗管理:店舗の運営に必要となる上記2業務以外のもの

    ②当該業務に従事する日本人が通常従事している関連業務(店舗において原材料として使用する農林水産物の生産、店舗における物品の販売等)に付随的に従事することは可能です。

  • 5,対象となる事業所の範囲
    日本標準産業分類の「飲食店」・「持ち帰り・配達飲食サービス業」に該当する事業を行う事業所であること。
    外食業分野の1号特定技能外国人を受け入れる事業者は、当該外国人を飲食店、持ち帰り飲食サービス業、配達飲食サービス業、給食事業等の飲食サービス業を行っている事業所に就労させること。

    例:食堂、レストラン、料理店、喫茶店、ファーストフード店、
    テイクアウト専門店(店内で調理した飲食料品を渡すもの)、
    宅配専門店(店内で調理した飲食料品を配達するもの)、仕出し料理店 など

    ※尚、ホテルのレストランは外食業分野の対象となります。但し、外食業全般(調理、接客、店舗管理)の業務を行うことが前提です。また、旅館・ホテル直営のレストランサービスの場合は、宿泊業分野で受入れることも可能です。

  • 6,外食業分野の1号特定技能外国人を受け入れる事業者に対して特に課す条件(接待飲食等営業関係)
    ① 1号特定技能外国人に対して、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下「風俗営業法」という。)第2条第1項に規定する「風俗営業」及び同条第5項に規定する「性風俗関連特殊営業」を営む営業所において就労を行わせないこと。

    ② 1号特定技能外国人に対して、風俗営業法第2条第3項に規定する「接待」を行わせないこと。

    「風俗営業」 及び「性風俗関連特殊営業」を営む営業所においては、「飲食物調理」、「接客」、「店舗管理」の業務であっても、1号特定技能外国人を就労させることはできません。

  • 7,受入れ機関等の条件
    「食品産業特定技能協議会」の構成員になり、必要な協力を行うこと
    協議会への入会申請は、1人目の1号特定技能外国人材の在留資格が許可された日から4か月以内に行ってください。)

    ②風営法に規定する「接待飲食等営業」の営業所に就労させないこと及び風営法に規定する「接待」を行わせないこと

  • 8,雇用形態と在留期間
    1号特定技能外国人の雇用は直接雇用とし、フルタイムで業務に従事するものであること。
    (特定技能制度のフルタイムとは、労働日数が週5日以上かつ年間217日以上であって、かつ、週労働時間が30時間以上であることをいいます。)
    在留期間は通算で上限5年までです。

出典:
留学生の就職支援に係る「特定活動」(本邦大学卒業者)についてのガイドライン
日本料理海外普及人材育成事業の一部改正について(農林水産省HP)
外食業分野における特定技能外国人制度について(農林水産省)令和4年8月




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