「特定活動46号」(本邦大学等卒業者)ビザを食品製造業での許可事例

今年の春に日本の大学を卒業されたベトナム人の女性(NGO様)が「特定活動46号」(本邦大学等卒業者)ビザを取得されました。弊所ホームページでもご紹介している「特定活動46号」ビザです。
「特定活動」46号(本邦大学卒業者)ビザ
「特定活動」46号(本邦大学卒業者)ビザ必要書類

さて、今回のブログでは、食品(給食)製造業で許可が出た「特定活動46号」(本邦大学等卒業者)ビザについて、NGO様と、NGO様の雇用主ハートスフードクリエーツ株式会社の西脇社長のインタビューをご紹介しながら、「特定活動」46号(本邦大学卒業者)ビザの特徴や必要書類についてお話したいと思います。

(写真:「特定活動」46号ビザを取得されたNGO様と雇用主のハートスフードクリエーツ株式会社の西脇章社長)
ハートス様公式ホームページ

今回のブログ内容:
1,「特定活動46号」ビザの特徴は?(「技術・人文知識・国際業務ビザ」との比較)
2,今回の「特定活動46号」ビザ取得ケースは?
3,「特定活動46号」ビザを取得されたNGO様のインタビュー
4,NGO様の雇用主ハートスフードクリエーツ株式会社西脇章社長のインタビュー
5,「特定活動46号」ビザの書類作成でしっかり証明する事
6,「特定活動46号」ビザの補強書類について
7,ブログの最期に

「特定活動」46号(本邦大学卒業者)ビザについて詳しくは
留学生の就職支援に係る「特定活動」(本邦大学等卒業者)についてのガイドライン(出入国在留管理庁HP)
「特定活動」46号(本邦大学卒業者)ビザ(弊所HP)
「特定活動」46号(本邦大学卒業者)ビザ必要書類(弊所HP)

まずは、「特定活動46号」(本邦大学等卒業者)ビザの特徴について簡単に確認してみます。

1,「特定活動46号」(本邦大学等卒業者)ビザの特徴は?

「特定活動46号」(本邦大学等卒業者)ビザの特徴として、「技術・人文知識・国際業務ビザ」と比較すると、以下の2つが大きく違う特徴といえます。

① 留学生としての経験で得た高い日本語能力を活用することが要件で、幅広い業務に従事する活動が認められます。
例えば、「技術・人文知識・国際業務」ビザでは、一般的なサービス業務や製造業務等が主たる活動となるものは認められません。しかし、「特定活動46号」では、諸要件が満たされれば、これらの活動も可能です。

「技術・人文知識・国際業務」よりも、条件がかなり厳しいです。
特に学歴と日本語能力については厳しい条件になっています。
1)日本の大学(院)、短期大学、高等専門学校を卒業していること。または、認定を受けた専門学校を修了し高度専門士の称号を得ていること。
※学歴について詳しくは、令和6年2月改定された「留学生の就職支援に係る「特定活動」(本邦大学等卒業者)についてのガイドライン」をご覧ください。
2)高い日本語能力がある
 ㋐日本語能力検定N1 又は BJTビジネス日本語能力テスト480点以上
 ㋑大学又は大学院において「日本語」を専攻して大学を卒業

次に、食品(給食)製造業で「特定活動46号」ビザを取得されたNGO様と、NGO様の雇用主ハートスフードクリエーツ株式会社のケースについてです。

2,今回の「特定活動46号」ビザ取得ケースは?

今回、「特定活動46号」ビザを取得された人材と受入れ機関は以下の通りです。
・人材(NGO様)の国籍と学歴・語学力:
 国籍:ベトナム
 学歴:日本の4年制大学 人間社会学部卒業
 日本語能力:N1
・人材の仕事内容:
 給食事業部での給食(商品)製造、児童・障がい者の方向けの商品企画、商品開発、
児童への食育教育の商品開発やイベント等企画開発
・申請から取得までに要した時間:
 およそ1ヶ月
・雇用形態:
正社員で雇用契約を結ぶ

続いて、NGO様と、NGO様の雇用主ハートスフードクリエーツ株式会社西脇章社長のインタビューです。

(上写真:NGO様)

3,「特定活動46号」ビザを取得されたNGO様のインタビュー

① 採用活動時のことについてお伺いします。就職活動で重視した点はどんなことでしたか?
NGO様:
介護、営業、事務等を募集している会社が多かったですが、自分には向かない仕事で、条件も合わないと思いました。大学で勉強した事や日本語、そして自分が好きな事を活かせる仕事が良いと思いました。また、日曜日が休めること等、自分の求める条件も重視しました。

② 大学で学んだ知識や日本語等の語学能力をどのように活かしたいと考えましたか?
NGO様:
日本語を使う機会が多い会社が良いと思いました。「児童心理学」、「障害者心理学」等の大学で勉強した学問的知識を仕事に活かしたかったです。また、人間観察も好きなので日本人と接する機会が多い職場が良いとも考えていました。それに、子供が好きなので子供たちと接することができれば良いなと思いました。

③ ハートス様を選んだ理由は何ですか?
NGO様:
就活の合同説明会に参加した時に、ハートスフードクリエーツ株式会社(以下ハートス様)の西脇社長は、自らが会社の説明を熱心にしてくれて好感が持てました。それに、私は子供が好きですし、野菜も好きで、食材には気を使っています。子供や野菜に接することができる仕事というのも良いと思いました。また、自分の仕事に対する理念や、目指す方向性がハートスさんと同じだと感じました。
その他、家が近い、日曜日が休める等、自分が求めていた条件に合うところも良いと思いました。

④ 入社してからの事をお伺いします。今は研修中だと思いますが、どんな研修をされていますか?
NGO様:
大阪のこども園で給食事業部での製造と、レストラン部門での接客業もしています。

⑤ 実際に仕事をしてみて、現場はどんなかんじでしょうか?
NGO様:
リーダーが現場をしっかり管理していると感じました。理念を守って難しい衛生管理もしっかり行っていると思いました。ただ、仕事がハードで疲れやすいのでしっかり睡眠をとることを注意しています。

⑥ 日本については如何ですか?
NGO様:
とても住みやすいです。交通も便利です。特に日本の秋が好きで、紅葉が大好きです。

4,NGO様の雇用主ハートスフードクリエーツ株式会社西脇章社長のインタビュー

※ハートス様は昨年も「技術・人文知識・国際業務ビザ」で外国人雇用をされています。ブログはこちらです➡農業分野での技術・人文知識・国際業務ビザの取得

① 採用面接の時に人材を選ぶポイントは、日本人と外国人とでは違いがないですか?
西脇社長:
ないです。利他の心が基本ベースです。そして、人材を選ぶときは、その方の強みを活かせる部署に入れることを考えています。

② 採用時に外国人も視野に入れ始めたのはなぜですか?
西脇社長:
コロナ前から外国人雇用は考えており、雇用もしていましたが、コロナの為に3年ほどストップしていました。ですが、人材不足がますます深刻化していく今後の将来を見越して、そして、外国人スタッフが海外展開の足がかりになってくれる等を考え、外国人採用を本格的に再開しました。

③ NGO様を採用した一番の決め手はどのような点でしたか
西脇社長:
大学で学んだ知識を活かして、食育や教育の分野で活躍してもらいたいと思いました。大学で学んだ学問だけではなく、NGOさんはベトナムでは小学校の先生の経験があります。その学歴と職歴を弊社で活かしてもらいたいです。例えば、子供目線で食材や食文化の成り立ちを教えてもらいたいです、また、嫌いな食べ物をどのようにすれば食べられるようになるか等で、商品や企画の開発をしてもらいたいです。

④ 昨年に引き続き外国人を採用されていますが、お仕事のご様子は如何でしょうか?
西脇社長:
「日本の事を覚えないといけない」、「生活に慣れなければならない」という気持ちが強いと感じます。同期の日本人と比べて、仕事に対する姿勢とか日々の業務に強い信念を感じます。

⑤ 現在研修中ですが、研修後に担当してもらいたい職務内容は当初と同じですか?今後将来してもらいたい仕事はどんな職務内容でしょうか?
西脇社長:
当初からの「保育園や幼稚園等で、食育や教育の分野に関連した活躍をしてもらいたい」という考えは変わりません。ですが、それだけでなく、その他にも活躍の場は多いと思います。例えば、NGOさんは、英語が出来ます。ですので、参加型体験ツアー等で、弊社のレストランのレセプションルームに来られた外国人のお客様に、アテンド通訳してもらいたいです。おせち料理や豆まき、季節の食材を使ってのお料理の説明をして欲しいです。

⑥ 今後の事業展開で外国人従業員の方にはどのような役割、業務(仕事内容)などを考えていますか
西脇社長:
将来的には、弊社の海外における事業で活躍して頂きたいと考えています。例えば、海外の日本人居住区での日本食の提供や、海外に住んでいる日本人の子供たちに日本食を伝えてもらいたいと思います。海外の日本人学校の給食を作るために、オーストラリアやカナダに行く事も考えています。

(上写真:お仕事中のNGO様の様子)


さて、ここからは、「特定活動46号」ビザの書類作成で証明しなければならない注意ポイントです。

5,「特定活動46号」ビザの書類作成でしっかり証明する事

ガイドラインには「3 日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務」とあります。ですので、以下がどの程度仕事内容に含まれるのか説明した方が良いと思います。

・「翻訳・通訳」の要素のある業務
・自ら第三者へ働きかけるような日本語の業務
・他者との双方向のコミュニケーションを要する日本語の業務
  
② ガイドラインの「4 従事しようとする業務内容に「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の対象となる学術上の素養等を背景とする一定水準以上の業務が含まれていることとあります。ですので、大学等で学んだ学問的知識や専門性を証明します。

「技術・人文知識・国際業務」ビザ取得の時のように、大学等で学んだ学科と会社での担当業務の関連性を、入管の審査官がわかるように説明した方が良いと思います。

NGO様の場合は、大学で学んだいくつかの科目とハートス様で担当する仕事内容の関連性や役立つ点を別に書面をつけて説明しました。
例えば、
「児童心理学」、「障害者心理学」
➡給食事業における「商品製造・企画・開発」で活かすことができる。
児童や障害者向けの「給食製造」、「商品(給食)の企画開発」、児童への「食育活動」に関連性がある。
 などを、ハートス様やNGO様に聞き取りをしました。

6,「特定活動46号」ビザの補強書類について
 
今回は、「特定活動」46号ビザ必要書類の他、雇用理由書、職務内容補足説明書等を作成しました。加えて、新入社員の年間の研修予定表や、お給料に関する規定も補強書類として提出しました。

① ガイドラインには、「特定活動46号」ビザの「5 具体的な活動例」がありますそのほとんどが、サービス業、現場の仕事になります。現場での仕事と今後の業務との関連性や研修の大切さ、日本人の同期と同じ扱いしている説明が必要だと考えます。

新入社員の年間の研修に付いてはこちらのページで詳しく説明しています。
 ➡技術・人文知識・国際業務ビザで許容される実務研修

ガイドラインの「7 日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること」とあります。日本人社員と外国人社員のお給料が同等額以上であることも証明しましょう。

7,ブログの最期に

今回のブログでは、食品製造業で「特定活動46号」(本邦大学等卒業者)ビザを取得された、ベトナム人NGO様の事例を、インタビューや書類作成についてのポイントを交えながらご紹介しました。

「特定活動46号」ビザは、「技術・人文知識・国際業務」ビザでは認められない、一般的なサービス業務や製造業務等も、諸要件が満たされれば可能です。しかし、「技術・人文知識・国際業務」よりも、学歴と日本語能力についての条件がかなり厳しいです。
業務内容がサービス業、現業職となるので、業務内容等は証明書類でしっかり説明した方が安心でしょう。

ハートス様のように、自社の強みを活かした独自の海外事業に、外国人社員の優れた能力を活かしていかれる日本企業が更に増える事を願っています。そして、「外国人雇用と就労ビザの取得分野」で、そのような日本企業様のお手伝いが出来ればと願っています。

最後になりましたが、NGO様とハートスフードクリエーツ株式会社の西脇社長には、ご尽力、ご協力頂きましたこと、この場をお借りして心よりお礼申し上げます。
誠にありがとうございました。

尚、今回のブログや「特定活動46号」(本邦大学等卒業者)ビザ申請についてご質問等ございましたら、是非お問合せください。

お問い合わせフォーム(弊所HP)

2024年09月14日