「技能実習制度廃止して新制度へ」のニュースと技能実習生の法的保護講習

4月11日、「技能実習制度の廃止、新制度へ」というニュースがNHKのニュース、各新聞等マスコミに大々的に報道されました。入管局のホームページ含め、NHKニュースや新聞を確認してみました。

ですが、「廃止➡新制度」というよりは「制度の見直し」のような印象で、受け入れの大枠はそんなに変わらないのではないか?と思いました。

「現行の技能実習制度」自体はそんなに悪くないと思いますが、制度を悪用する問題のある機関もあります。また実習生を巻き込んだ犯罪も多いことから、より良い「新制度」に生まれ変わって欲しいと願うばかりです。

入管局のホームページ:技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議(第6回
➡第7回の発表(2023年4月28日)もありました:技能実習・特定技能
「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議(第7回)」


入管局のHPにある技能実習制度及び特定技能制度の有識者会議(第6回)と新制度
それでは、最初に入管局のホームページにある「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議(第6回)」の「中間報告書(案)」概要を見てます。

制度目的と実態を踏まえた制度に
技能実習制度は1993年から始まった「発展途上国への技術移転、人材育成を目的」としています。ですが、実際は「労働力不足を補う」制度になっており、実態とはかけ離れています。新制度では実態に即し「人材確保」を目的に加える予定です。
また、「人材育成」についても、「未熟練労働者を一定の専門性や技能を有するレベルまで育成する」と明記されていました。
「特定技能制度」については、引き続き活用する方向で検討されるようです。

外国人が成長し中長期に活躍できる制度に
新たな制度と特定技能制度の対象職種や分野を一致させる。
現行は対象分野でない技能実習職種の特定技能対象分野への追加及び特定技能2号の対象分野の追加について、必要性を前提に検討。

③受入れ見込数等の設定、対象分野の追加等の透明化
様々な関係者の意見やエビデンスを踏まえつつ判断される仕組みとする等の、措置を講じることでプロセスの透明化を図る

④技能実習制度の転籍を緩和
制度目的に人材確保と人材育成があるので、人材育成に由来する転籍制限は残しつつも、制度趣旨と外国人の保護の観点から、転籍は従来より緩和する

⑤管理監督や支援体制のあり方
• 監理団体や登録支援機関が担っている機能は重要だが、人権侵害等を防止・是正できない監理団体を厳しく適正化・排除する必要がある。
• 監理団体や登録支援機関の要件の厳格化等により、監理・支援能力の向上を図る。
• 外国人技能実習機構の体制を整備した上で管理・支援能力の向上を図る。
• 悪質な送出機関の排除等の取組を強化する。

⑥日本語能力向上への取組
一定水準の日本語能力を確保できるように日本語能力が段階的に向上する仕組みを設ける

今後は、中間報告書の方向性に沿って具体的な制度設計について議論を行い、令和5年秋を目途に最終報告書を取りまとめるとのことです。

■技能実習の転籍問題に遭遇した時
私は、技能実習生の書類を比較的多く作成したことがありますが、その中には、「転籍」に関わる書類もありました。
転籍の理由は、「残業代の不払い」、「暴力」でした。

その実習生さんたちを管理監督する組合は良い監理団体様だったので、当然、すぐに別の会社に転籍させなければならない!!という事になりました。
私もすぐに「転籍」の書類を作成しました。そして、外国人技能実習機構に相談したところ、事の重大さを踏まえて早々に実習先変更の許可を進めて頂けました。

技能実習は転籍できないのか?
技能実習生は転籍(会社の変更)できないのか?ということですが、上記したように、できないことはありません。以下のような「やむを得ない事情」の場合は会社を変わる(転籍する)ことが可能です。
ただ、それを知らない実習生は多いかもしれません。

<やむを得ない事情>
・会社が倒産・廃業、経営悪化で事業縮小した
・会社が実習認定の取消しを受けた
・会社で暴行などの人権侵害行為があった
・会社がお給料や残業代を支払わない等労働契約に違反があった
など。

最近の法的保護講習:2023年4月
東大阪研修センター(運営会社:株式会社ワンネスジャパン)様での講習の様子
株式会社ワンネスジャパン様HP

法的保護講習で「転籍」等、実習生にお話すること
当事務所は、就労ビザに特化して業務をしています。「技能実習」ビザや「特定技能」ビザの業務にも携わっていますが、書類作成だけでなく、法的保護講習の講師を月に数回させて頂いています。

技能実習生は、日本に入国した後すぐに入国後講習を受けます。
その入国後講習の科目の一つが法的保護講習です。
法的保護講習では、入管法、技能実習法、労働関係の法律が中心ですが、日本での生活やルールについてもお話ししています。

私が、各法律の他、力を入れてお話しているのは以下のようなことです。
・日本の職場で守るべきルールや注意点
・会社で暴力等、人権侵害がおきた場合の対処
・転籍できる場合はどんな場合か
・失踪しても自分が苦しむだけである事(一人で悩まない・相談先)
・犯罪に巻き込まれない為に注意する事
・結婚、妊娠、出産について(一人で悩まない・相談先)
・熱中症や災害について
・生活で気を付ける事(ゴミのルール、騒音、日本人との付き合い、日本の行事)

■法的保護講習、会社様への講習
ところで、新制度になっても、「外国人に対しての講習」はあるのではないかと思います。入国したばかりの外国人には、どのビザであってもそのような講習は必要だと考えられるからです。

法的保護講習で使用する「技能実習生手帳」は、とても良いテキストです。できれば、外国人を雇用する日本企業の責任者の方や人事部の方にも、この手帳にある技能実習法や入管法を知って頂ければ良いのにと、講習の度に思います。特に入管法は、技能実習ビザだけでなく、どの就労ビザにも共通の基本的なことが書かれています。入管法の基本を知っておくだけでも、「知らないうちに不法就労させていた」等のケースが少なくなります。

「技能実習手帳」(英語版:英語/日本語)手帳は9か国語対訳になっています。

新制度の運用は2024年以降になるようです。技能実習制度が廃止され、技能実習制度の問題点が見直された、より良い新しい制度に生まれ変わることを願っています。

尚、当事務所では、技能実習生の法的保護講習だけでなく、外国人雇用について企業様向けの講習もさせて頂いております。また各就労ビザについてもご相談を受け付けております。
どうぞお気軽にお問い合わせください。

2023年04月23日